未確認生物の代表格といえば、やはり英国・スコットランドのネス湖にすむといわれている「ネッシー」だろう。目撃証言が出るたびに世界を騒がせ、世界各地で「我が国のネッシー」ともいえる謎の大型水生生物が次々と発見されたり、謎の生物の伝説が再注目されたりした。昨今のご当地ゆるキャラブームのような具合と言えばいいだろうか。

 さて、スコットランドにはネッシーと同じく怪物がすまうという伝説で有名な湖がもう一つあった。ネス湖から60キロほど離れたモラー湖には「モラーグ」という名前の巨大な怪物がすんでいると考えられていたのだ。なお、モラーグという名前はゲール語で湖の精霊を指す「ヴォラッグ(Mhorag)」から来ている。

 モラーグの目撃証言は古くは19世紀にさかのぼるが、1930年代には陸に上がった姿が何度も目撃され、話題になった。この時、小学生が湖に飛び込むモラーグらしき生物の姿を目撃しているが、ゾウのように巨大で水しぶきを上げながら湖に飛び込んでいったとされている。

 また、69年には2人の釣り人の乗った船にモラーグが体当たり(衝突しただけかもしれないが)し、湖面に顔を出したモラーグに襲われかけるという事態も起きている。この時、モラーグは1人が振り回したオールにかみついてきたりしたので、もう1人がショットガンを撃って撃退に成功、モラーグは水中へと姿を消したという。この事件は英国の公共放送BBCで大きく報道され注目された。

 77年と83年にはそれぞれ目撃者による写真が撮影され、最近の例では2013年にも湖の展望台から、湖面に姿を見せたモラーグが撮影されている。

 モラー湖の周辺は交通の便が悪く、ネス湖に比べるとはるかに訪れる人が少ない。しかし近年に至るまで多数の目撃証言が寄せられているので、モラーグは実在の可能性が高いのではないかと考えられている。

 そんなモラーグの姿は体長12〜20メートル、ヘビのような長い首とコブのある背中、顔は馬に似ていて頭には2本の角のような突起があるとされており、正体は外見的特徴からプレシオサウルスなど古代の首長竜ではないかという説が一番強い。

 一方でネス湖のネッシーも10メートルを超す巨体に長い首、頭には2本の角らしき小さな突起があり、古代の首長竜に似た姿をしているといわれている…そう、モラーグはネッシーに姿が酷似しているのだ。

 前述の通り、ネス湖とモラー湖は60キロ程度しか離れておらず、またネス湖の水深が非常に深いため、地下でモラー湖とつながっているのではないかとする説があるのだ。そうすると、モラーグの正体は湖を越えてやってきたネッシーそのものということになる。

 さて、モラーグの正体はそっくりさんなのかネッシー本人なのか。真実はいまだ湖の中で息を潜めている。