未確認生物で近年注目を集めている地域が東南アジアだ。特にマレーシアでは3メートルを超えるビッグフットに似た獣人型UMAが目撃されたり、大型生物の骨が発見されるなど巨大なUMAに関する目撃証言や証拠が相次いで発見されているのだ。

 そんな中、未確認生物の中でも類を見ない異形の姿をしていたために話題になったUMAが、今回紹介する「多頭巨人」だ。

 目撃されたのは2009年、首都クアラルンプールでのこと。マレーシア人と中国人の2人が夜道に立つ巨大な人影に遭遇した。

 その人影は身長約12フィート(約3・7メートル)もあり、長い胴から極端に短い腕と足が生えていた。そして何より、頭が複数あったというのだ。そしてこの異形の巨人は、驚く目撃者たちに向けて話し掛けてきたという。

 その言語は今まで聞いたこともない言葉で、複数の人間が同時にしゃべっているかのようだったという。すべての頭が口を開いてしゃべっていたのだろうか…。

 なお、姿こそ恐ろしいものであったが、非常におとなしく、態度はむしろ紳士的ともいえる雰囲気だったため、目撃者らが生命の恐怖を感じたことはなかったという。

 そして、手にしていた携帯電話での撮影にも成功している!

 文頭に掲載されている写真がその多頭巨人をとらえたものである。体のところどころがぼこぼこと奇妙に膨れ上がり、細い手足がのぞいている様子が逆光の中に浮かび上がっている。

 目撃者たちは、この巨人が今まで聞いたことのない言語を操っていたことから宇宙人だと考えたようだ。確かに過去に目撃された宇宙人の中には非常に大きな体を持つものが存在する。1952年に米国で目撃された「フラットウッズ・モンスター」、73年に同じく米国で目撃された「パスカグーラの宇宙人」などが約3メートルの巨体を誇るものだ。しかし、頭が複数あるようなケースは他の宇宙人にも見られない。

 一方でマレーシアには通称「出っ歯の幽霊(Snaggle—toothed Ghost)」と呼ばれる、密林の奥深くに潜み人間には危害を加えない、おとなしい怪物の伝説がある。

 日本にも体が1つで頭が2つある「両面宿儺(りょうめんすくな)」や、欧州にまで目を向ければ複数の頭を持つ「ダンタリオン」という悪魔が存在する。彼らが見たのは宇宙人ではなく、昔から人々の間で語り継がれてきた怪物の姿だったのだろうか?


 ここで、いま一度撮影された写真をよく見てほしい。もともと逆光になり鮮明なものでないため、トリック写真ではないかとも考えられているものであるが、問題のシルエットをよく見ると——まるで1人の人間の肩に2人の人間が乗っているように見えないだろうか?

 また、目撃した人物がマレーシア人と中国人という組み合わせも興味深い。マレーシアではインド系住民、中華系住民、マレー系住民の複数グループが対立しており、民族間の対立構造が国内問題を引き起こしているとする見方がある。つまり、複雑な民族問題を多頭の怪物になぞらえてやゆしたものだったのではないか、とされているのだ。

 昔から社会風刺にグロテスクな怪物を創作し、隠喩する文化は世界各地に存在した。今回の多頭巨人もそんな社会風刺の産物だったのだろうか?