オカルト評論家・山口敏太郎氏が都市伝説の妖怪、学校の怪談、心霊スポットに現れる妖怪化した幽霊など、現代人が目撃した怪異を記し、妖怪絵師・増田よしはる氏の挿絵とともに現代の“百鬼夜行絵巻”を作り上げている。第93回は「ゾンビ看護婦」だ。

筆者がユーチューブで毎日更新している「アトラスラジオ」に投稿いただいた内容である。「ゾンビ看護婦」は文字通り、病院に出るとされる妖怪であり、特に廃虚の病院によく出没するという。学校の怪談で語られることが多い。

 看護師の姿をしており、その被害者を便所まで追い詰める。被害者が便所の個室に隠れていると、一つ一つ扉を開けて確認してくる。ところが、いつまでたっても隠れている個室には確認をしに来ない。ふと、気になって上を見上げると扉の上から、じっとのぞいていたというものだ。

 変則バージョンだと、「ゾンビ看護婦」が車いすを押しながら追いかけてくるという話も存在する。本来、病気やケガで弱っている人を助ける看護師が、なぜ妖怪のモチーフになったのであろうか。筆者の考察だが、ここ数年、看護師が犯罪に手を染めるケースが報道されている。点滴に害悪を及ぼす薬品を混入したり、老人を自分の都合によって殺したり、看護師による犯罪は陰惨なものが多く見られる。

 いつしか、“白衣の天使”が死を招く悪魔へと変貌しているのだ。そんな犯罪を耳にした子供たちがこの現代妖怪を作り上げていったのかもしれない。