
オカルト評論家・山口敏太郎氏が都市伝説の妖怪、学校の怪談、心霊スポットに現れる妖怪化した幽霊など、現代人が目撃した怪異を記し、妖怪絵師・増田よしはる氏の挿絵とともに現代の“百鬼夜行絵巻”を作り上げている。第83回は「見たなの怪」だ。
電車に乗っていると、その車両に飛び込み自殺が行われる。その瞬間、切断された首が宙を舞い目撃者と視線が合う。その瞬間、首は「見たな」と話し掛けてくるというストーリーで、定番中の定番の話である。
電車の事故で亡くなった犠牲者の遺体が飛んできて、目撃者と接触する話は現実に存在する。かつてJR新小岩の駅で飛び込み自殺をした方の遺体がホーム上を飛んで移動し、関係のない乗客にぶつかってしまう事故が発生した。この事件なども、都市伝説の成立に大きく関与している可能性が高い。
しかし、ほんの数分前まで生きていたはずの生首が魔性の存在として成立するのは何でであろうか。
首というと「ろくろ首」が思い浮かぶが、かつて日本人は胴体から離れた首は空中を飛行するなど、さまざまな怪異をなすといわれた。「将門の首」「悪路王の首」ともに首が空中を飛行し、多くの人々を恐れさせた。
日本人は胴体から離れた首に対して、妖怪化したとみなす傾向があるようだ。日常生活に忍び寄る魔物として、駅で見かける事故を当てはめたのであろうか。
【山口敏太郎】作家、ライター。著書「日本怪忌行」「モンスター・幻獣大百科」など200冊あまり。テレビ出演「怪談グランプリ」「ビートたけしの超常現象Xファイル」「緊急検証シリーズ」など。ユーチューブでオカルト番組「アトラスラジオ」放送中。
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