【山口敏太郎オカルト評論家のUMA図鑑443】米国の未確認生物と言えば「ビッグフット」や「モスマン」「チュパカブラ」や「スキンウオーカー」などの都市伝説的側面の強いものや、比較的新しいものをイメージする人も多いかもしれない。しかし、振り返ってみると「かつては言い伝えられていたが、現在ではほとんど見られなくなった」未確認生物の話も多いのだ。

 今回紹介するのはメリーランド州に伝わる「スナリーギャスター」だ。同州フレデリック郡に伝わるドラゴンのような生物で、この地に定住したドイツ系移民が1730年代に「シュネラー・ガイスト(素早い幽霊の意味)」と呼んだことからこの名が付いた。

 この生物は金属製のくちばしに鋭い歯、赤い目を持つ半鳥・半爬虫類の姿をしており、空から静かに舞い降りてタコのような触手で人間をつかみ、血を吸うと言われている。だが納屋や家に七芒星を描くことで、住人や家畜をスナリーギャスターから守ることができたという。

 スナリーギャスターには天敵となる生物の話も伝わっていた。約2メートルほどの犬人間のような怪物の「ドワイヨ」で、この生物はスナリーギャスターを殺すことができるという。昔話のように思えるかもしれないが、1960年代半ばには、スナリーギャスターとドワイヨのものとみられる生物の足跡などが見つかり、おそらく縄張り争いの痕跡だろうと地元の新聞が報じた。

 このように現地ではあまりにも「実在する」かのようにうわさされていたため、過去にはスミソニアン博物館がスナリーギャスターの皮などの証拠を持ってきた人に報奨金を出したり、セオドア・ルーズベルト米大統領が個人的にスナリーギャスターを捕まえようとしたという逸話が残っている。また、映画や絵本にもよく登場するなど、創作の世界では人気の〝ご当地UMA〟でもあったようだ。

 2021年になって、スナリーギャスターの伝説のおひざ元であるメリーランド州フレデリック郡にこの怪物に関する資料を集めた資料館がオープンした。スナリーギャスター博物館の館長を務めるサラ・クーパー氏は、博物館を建てたきっかけについて「数年前にメリーランド州に引っ越してきた時、こんなに興味深い生物の伝説があるのに、どうして注目されていないんだろう?と思ったんです」と地元紙のインタビューで答えている。

 彼女は現在、夫と一緒に納屋を改装して資料館を整備中であり、それまでスナリーギャスターに関するさまざまな資料をすべて自宅に保管しているという。コレクションにはスナリーギャスターをモチーフにした芸術品や工芸品、ポップカルチャー作品が含まれており、ツアーやその他イベントスケジュールなどの詳細は開設済みの同ギャラリーの公式サイトで確認できる。

 興味深いことに「次世代のスナリーギャスターが誕生する」予定もカレンダーには記載されている。なんでも、伝説によればスナリーギャスターは20年生きた後、20年地中に潜って再び孵化すると言われており、クーパー氏の計算では2024年に新たなスナリーギャスターが姿を現すというのだ。新たに産まれたスナリーギャスターが、この博物館を訪れることもあるかもしれない。

【参考画像】https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/f/f2/Snallygater_lumberwoods.png

【参考URL】https://mysteriousuniverse.org/2021/11/the-american-snallygaster-cryptid-gets-its-own-museum/