オカルト評論家・山口敏太郎氏が都市伝説の妖怪、学校の怪談、心霊スポットに現れる妖怪化した幽霊など、現代人が目撃した怪異を記し、妖怪絵師・増田よしはる氏の挿絵とともに現代の“百鬼夜行絵巻”を作り上げている。第61回は「チャリンコババア」だ。

 福岡県某市に出現する妖怪である。自転車に乗ったババア系妖怪で、ずぶ濡れ状態で道を爆走し、池の中に入っていくという。それが「チャリンコババア」だ。

 この話を筆者は15年ほど前に親戚の女の子から聞いたのだが、かつて地元に住む高齢女性が自転車に乗っていた際、公園の池に落ちて亡くなってしまったそうだ。近所の感じの良いおばあちゃんが水死したことから、子供たちの間で池に対する恐怖が深まり、この妖怪が生まれたものと思われる。

 妖怪の世界では、人と乗り物が一体化しやすいようだ。「一つ車」「輪入道」、現代妖怪では「首無し暴走族」「首無しライダー」「タクシー幽霊」などが思い浮かぶ。いずれも運動する車輪の動きと一体化した人体を持つ妖怪である。

 また、動力として馬まで広げた場合、徳島県に現れる馬に乗った鬼の「夜行さん」「首無し武者」「オシラサマ」などがいる。

 どうやら人間を超えた能力で走る乗り物は人と一体化し、妖怪化するものと思われる。

 こういう思考を進めていくと、宇宙開発が進む現代においてはロケットに関する妖怪や、生活に浸透してきたキックスケーターと一体化した妖怪が誕生するかもしれない。さまざまな乗り物との合体妖怪ができる可能性があるのだ。