オカルト評論家・山口敏太郎氏が都市伝説の妖怪、学校の怪談、心霊スポットに現れる妖怪化した幽霊など、現代人が目撃した怪異を記し、妖怪絵師・増田よしはる氏の挿絵とともに現代の“百鬼夜行絵巻”を作り上げている。第49回は「ツラカクシ」だ。

「ツラカクシ」は人間の顔マネをする妖怪である。しかし、人間の顔マネをするのが非常にヘタくそで、顔を人間に見せることはなく、顔を隠す。見せてしまうとすぐに正体がばれてしまう。文字通り、ツラを隠す妖怪だ。

 その顔はバラバラにつけられた福笑いのパーツのようにちぐはぐだが、やたら目が細いのが特徴である。

 妖怪としては脇があまいのか、顔を見られると、「おしかった、おしかった」と2回繰り返して、消える。

 なぜ、顔マネをするのかといえば、死んだ老人に化けて、生きている人間に襲いかかるからだとされている。ちなみにこの妖怪に襲われたという小学生は、命からがら逃げ出したそうだ。

 それにしても顔を隠すというのは、日常生活ではあまり見られるものではなく、非日常的である。そこに非日常=妖怪が成立するのだ。なお、顔の妖怪ならば、顔が片方しか存在しない「カタヅラ」という半面妖怪が存在するが、これもツラカクシの仲間かもしれない。

 子供の遊びで「いないいないばあ」があるが、「いないいないばあ」とはいったい何が「いない」で、いったい何が「いる」のであろうか? ますます謎が深まるばかりである。