【山口敏太郎の現代妖怪図鑑43】靴に化ける“付喪神”の一種「くつむし」

2021年06月09日 11時30分

くつむし

 オカルト評論家・山口敏太郎氏が都市伝説の妖怪、学校の怪談、心霊スポットに現れる妖怪化した幽霊など、現代人が目撃した怪異を記し、妖怪絵師・増田よしはる氏の挿絵とともに、現代の“百鬼夜行絵巻”を作り上げていく。第43回は「くつむし」だ。

 ある山に出る妖怪である。何人かで山に登り、途中、足が疲れたので靴を脱いで一休み。ふと気がつくと自分の靴が2足になっていた。不審に思いつつも、見知らぬ1足を履いてみると激痛が足に走った。靴を履いた本人が苦悶の表情を浮かべるので、仲間が大急ぎで靴を脱がせると、足に血がにじんでいる。薬を塗っている間に、脱いだ靴はどこかに行ってしまった。

 その靴は妖怪「くつむし」が化けたものであったのだ。この妖怪は、付喪神(つくもがみ=長年使用された道具に霊魂などが宿ったもの。もしくは道具自体が妖怪化したもの)の一種である。妖怪「化け草履」というのがいるが、これは古くなった履物が妖怪と化したものである。

 そもそも、履物というものは、占いの道具の一つである。誰しも子供時代、「明日天気になーれ」と自分の靴を上空に向かって蹴り上げて、翌日の天気を占ったものである。靴が上を向くと晴れ、靴が下を向くと雨であった。

 他にも靴というのは契約の印である。シンデレラはガラスの靴で王子様と結婚の契約を行った。

 日本史上でも中大兄皇子が蹴鞠ですっぽ抜けた靴を、中臣鎌足が拾ってあげて、親しくなっている。2人はその後、共に蘇我氏打倒に動いていったのだ。

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