比較的新しいUMAである遺伝子操作の怪物「モントーク・モンスター」。この名前は、米国の未確認動物学者ローレン・コールマン氏が名づけたものである。

 事件の発端は2008年7月、ニューヨーク州南部・モントーク岬の海岸から始まる。この海岸はロングアイランド西端に突き出た岬であり、潮流の関係だろうか、様々な漂流物が流れ着くことでも知られている。

 同地で発見された動物の死体は、まさに異形であった。頭部にはくちばしを思わせるとがった部分があり、異常に鋭い歯で、体毛は全くなく、体形も既存の動物とは違う形状であった。さらに、体長は猫サイズの小型であった。

「くちばしがついた犬に似た怪物」——このフレーズは世界中のUMAファンを興奮させた。

 日本のUMAファンは特撮映画「大巨獣ガッパ」を連想し、英語圏のUMAファンはC・ドイルによる「シャーロック・ホームズ」シリーズに登場する「バスカービルのグレイハウンド(日本語訳ではバスカービルの魔犬)」を連想した。

 この怪物の正体を推測する論争はヒートアップし、米国における陰謀論の大家であるジェシー・ベンチュラ氏の持論に似た闇のアンダーガバメントの謀略説を生み出してしまった。つまり、闇の勢力が作り上げた人工的な怪物だという話が流布されたのだ。

 他にも近い種類の生物の交雑から生まれたハイブリッド生物説、キメラ生物説、未確認動物説、甲羅が落ちたカメ説、ブルドッグなど犬説が唱えられている。

 特に有力視されたのが、遺体漂着現場から30キロメートルほど離れた場所にある家畜疾病センターから逃げ出した変異体という説である。このセンターは1954年まで軍の施設であったため、今も対外的偽装しながら軍事的な遺伝子操作実験をしていると噂されている。ちなみに後にセンター側は56年に農務省の管轄になり、軍の仕事とは一切関係なく、遺伝子操作は一切行っていないとコメントしている。

 他にも豪州のげっ歯動物である水ネズミ説、オポッサム説、カワウソ説が研究家・専門家によって出されている。

 名づけ親の未確認動物学者コールマン氏はモントーク・モンスターの遺体をラテックスで再現した複製を調べて、アライグマの遺体であると提唱した。このアライグマ説はなかなか説得力があり、四足歩行の哺乳類では珍しい“やたらに長い指”こそがアライグマだと言われる根拠であり、骨格も似ているとされている。

 このモントーク・モンスターと他のUMAを比較する動きもある。まずはチュパカブラである。このモントーク・モンスターの遺体は吸血生物チュパカブラと同類ではないかと、一部の専門家は推論している。また、2009年9月に中南米パナマで発見された体毛のない怪物「パナマクリーチャー」とも関連があるのではないかと言われている。

 この怪物の発見騒動は、08年7月12日に始まった。イースト・ハンプトンの町が所有するレインステイン・エステート公園はサーフィンの人気スポットであり、その日も多くの人々が集まっていた。この公園近くに来たジェナ・ヒューイットさん(26)ら3人の女性は、座るための場所を探していたところこのモントーク・モンスターの遺体を発見した。

 彼女たちは「私たちは、それが何であるか分かりませんでした。私たちは多分、それがプラム島からもたらされた実験の結果だろう」と冗談を言い合ったという。彼女たちは、遺体を写真撮影しマスコミに提供したという。その結果、写真付の記事が08年7月23日にローカル新聞に掲載された。

 この3人が撮影した写真とは違うアングルの写真も多数流出しており、目撃していたやじ馬の多くが撮影したことが分かる。ケーブルテレビ「ヒストリーチャンネル」で放送されている人気番組「未確認モンスターを追え」第37回では、クリスティーナ・パンパローン女史が7月12日に発見して撮影したと解説されている。

 なお、くちばしのように見えた突起も、違う角度からの写真では上顎骨であることが判明しており、顎骨の特徴から考えてボクサー犬もしくはブルドッグではないかとも言われ始めている。また、疥癬(かいせん)に感染した哺乳類であるという説もかなり有力になっており、イヌ科、あるいはイヌ科に近い生物が疥癬に感染し体毛が抜け落ち、海水に落ち水ぶくれになった結果、異形の生物になったのではないかという結論に固まりつつある。

 疥癬になり水ぶくれになったイヌ科の生物という結論が出ながらも、唯一気になるのは、腕にタグのようなものが巻きついている点である。つまり、人間が管理していた生物であるということなのだ。やはり、この生物には何らかの人間の真意があるのであろうか。

 実は似た生物はその後も発見されている。09年5月、ロングアイランド島サウホールドの砂浜で同様の生物の死体が発見されており、12年7月、ニューヨーク市のイースト・リヴァー、ブルックリン橋の下でも、同様の生物の死体が発見されている。