オカルト評論家・山口敏太郎氏が都市伝説の妖怪、学校の怪談、心霊スポットに現れる妖怪化した幽霊など、現代人が目撃した怪異を記し、妖怪絵師・増田よしはる氏の挿絵とともに、現代の“百鬼夜行絵巻”を作り上げていく。第31回は「はちせさん」だ。

 これは、とある学校の近隣に住んでいる妖怪である。その学校の隣に神社があり、その神社と学校の間には一本の小道があった。この小道に出る妖怪が「はちせさん」であった。

 そもそも学校というものは明治維新以降に建てられたものが多い。その場所は古戦場とか、墓場とか、忌み嫌われる場所が多く、一般の民家がなかなか建設されない場所であった。それゆえに、学校というものは近代において多数の妖怪を生み出すことになったのだ。

 この妖怪は2メートルを超える巨大な女性であり、なぜか、鉢を背負っているという。鉢背(はちせ)ということだろうか。巨大な女性というモチーフは妖怪業界ではよく出てくるものであり、「八尺様」や「七尋女房」などがその代表的存在である。女性の社会的地位が弱かった当時、巨大な女性というだけで妖怪的設定を網羅していたのだ。

 なお、この妖怪とすれ違った時、振り向いてはいけないと言われる。振り向くとその鉢に閉じ込められてしまうらしい。鉢という小道具がなかなか意味深である。妖怪というのは鉢を背負っていたり、傘を身につけていたりすることが多い。特徴的なアイテムを持っていると妖怪になりやすいのだ。