オカルト評論家・山口敏太郎氏が都市伝説の妖怪、学校の怪談、心霊スポットに現れる妖怪化した幽霊など、現代人が目撃した怪異を記し、妖怪絵師・増田よしはる氏の挿絵とともに、現代の“百鬼夜行絵巻”を作り上げていく。第28回は「ジンカン」だ。

 東北地方のある集落に伝わる妖怪である。人間をつつくカラスが出ると、この妖怪が現れる前兆らしい。そのため「人を襲うカラスが出始めたら、そのカラスを殺せ」という迷信がその集落には残されている。特についばんだ人間の髪の毛でカラスが巣を作り始めると危ない。その黒い巣に黒い卵が産みつけられたら、そこから血しぶきを上げながら妖怪「ジンカン」が生まれる。

 害を防ぐには、玄関にクモの巣を張っていると良いとされていた。地元の神社には、「ジンカン」がカラスの卵から生まれ、人間を虐殺する様子が絵に描かれている。この妖怪の情報は文章ではなく、このように絵と口伝で伝えられるらしい。

 襲われた被害者によると、その姿は人間の形はしているものの、真っ黒で首が信じられない角度で曲がる。ガソリンをぶっかけて焼くと死ぬという。

 なお、神社の絵に関しては違う解釈があり、カラスの黒い卵から生まれるのではなく、「ジンカン」はカラスの黒い卵で死ぬというメッセージにも受け取れるらしい。

 また、蜘蛛は「ジンカン」よけではなく、人を襲う目印になるという説もある。