日本では、昔から何かしらの災害や大きな事件の前触れとして奇妙な生物が出現すると言われていた。人の顔で牛の体をした妖怪「件(くだん)」だ。件は普通の牛から生まれ、すぐに人間の言葉を話して何らかの予言を残し、数日で死ぬとされていた。

 中には写真や件のミイラとされる現物も残っており、妖怪ではなく未確認生物に分類されることもある。

 現在では件の正体について、おそらく奇形で生まれてしまった子牛と、たまたまその時に起きた災害をリンクさせて考え出されたものではないかとみられている。

 さて、このような「災害などの前触れ」とされた妖怪や未確認生物は日本だけでなく海外にも存在している。アイルランドの「プーカ」がそうだ。

 プーカはアイルランドに伝わる妖精だが、非常に定義があいまいなものだ。

 姿については「黒く、姿を変える」とされており犬やウマ、ワシ、ヤギなど、さまざまな動物になることができるとされている。出会うと命を落とすという恐ろしい側面があるかと思えば、丁重に扱うと幸運や恩恵をもたらすとされていた。地域によっては予言や警告を残すとも言われている。

 そんなプーカらしき生物の姿を目撃した、という証言も存在している。1928年、プレシントンのポラプーカ湖近くの河川で、ある人物がイヌともヒョウとも見分けがつかない奇妙な黒い生物が泳ぐのを目撃。歯をむき出しにしてうなり声を上げてきたという。目撃者は自分が何を見たのかは分からなかったが、後にこの地に伝わる妖精プーカの姿と酷似していたため驚いたのだという。

 また、ゴールウェイ州アビスデリー湖では1800年代半ばに起きたクリミア戦争の最中と、第1次世界大戦が起きる前の年に10メートルを超える大蛇が出現し「伝説のプーカが現れた」と騒動になった。

 これに前述の「プーカは予言や警告を与える」という言い伝えが加わり「大きな戦争が起きるときにはプーカが現れる」と噂されるようになったのだそうだ。

 湖に現れたプーカの正体については、ここまで巨大なヘビはアイルランドに生息していないため、カワウソの誤認ではないかとする説が存在している。

 しかし、いずれにしても巨大に成長する個体はあり得ないため、今でも正体は謎に満ちたものとなっている。


https://www.youtube.com/watch?v=XRiIVxrXDaI

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