オカルト評論家・山口敏太郎氏が都市伝説の妖怪、学校の怪談、心霊スポットに現れる妖怪化した幽霊など、現代人が目撃した怪異を記し、妖怪絵師・増田よしはる氏の挿絵とともに、現代の“百鬼夜行絵巻”を作り上げていく。第22回は「アガザル」だ。

 田んぼに挟まれた狭い場所で踊り狂う妖怪。名前を「アガザル」という。全身が赤い毛で覆われた猿のような存在であり、顔がのっぺらぼうである。その出現は火事の前兆であり、SNSなどへの投稿者が目撃した後、近所で不審火が発生している。以下は山口敏太郎の見解である。

 この妖怪アガザルは伝承妖怪の「猩々(しょうじょう)」と関連があるのかもしれない。両者は同じように赤い毛で全身が覆われている。また、火事の前兆となる妖怪は他にも存在する。

 筆者も目撃している現代妖怪の「赤い服の女」や、そのまま放置すると火事を引き起こす「天火」、鶏に似た姿をしており、火事を引き起こすといわれている鹿児島県沖永良部島の妖怪「ひざま」などが想起される。

 火事に対する不安は、人々の心の中にさまざまな妖怪を生み出したのかもしれない。