オカルト評論家・山口敏太郎氏が都市伝説の妖怪、学校の怪談、心霊スポットに現れる妖怪化した幽霊など、現代人が目撃した怪異を記し、妖怪絵師・増田よしはる氏の挿絵とともに、現代の“百鬼夜行絵巻”を作り上げていく。第20回は「青舌」だ。

 人間を舐(な)める妖怪「青舌」は、とある山に出る妖怪である。空中に紫色の半開きの口だけが出現し、ペロリと人間の首筋や頬を舐める。この妖怪を「青舌」と呼ぶそうだ。舐めるだけで特に悪いことはしない。

 ネットへの投稿者は、その山にある寺にキャンプで訪れた時に、同級生たちとともに紫色の口と、半開きになった口から出た青黒い舌を目撃したという。

 筆者こと山口敏太郎はこの妖怪に非常に注目している。舌を出す妖怪といえば「赤舌」を思い出す。これは飢饉を妖怪として表現したものらしい。また、人間を舐めるという行為に限定するならば、徳島県の妖怪「なめ女」が思い出される。これは猫のような気持ちの悪い舌で、人間の全身を舐め回すといわれている。

 文学作品に出てくる妖怪ならば「舌長姥」が想起される。「舐める」という行為そのものが妖怪じみていて、人間を生理的に“ゾッ”とさせて、妖怪として成立させるのであろう。