百獣の王・ライオンといえば立派なタテガミを持つ姿を想像しがちだが、実はその毛皮がまだら模様になっている種類が存在するという話がある。

 そんな「まだらのライオン」は通称「マロジー」といい、アフリカの原住民の間で話題になっている。その存在が知られた20世紀初頭から、たびたび調査が行われ、存在の裏付けとなる様々な証拠もまた発見されるに至ったものだ。

 まだらのライオンことマロジーの目撃証言は1904年には報告されていたそうだが、ヨーロッパ人による最初の報告は31年になる。ケニアの農民マイケル・トレント氏はアバーディア山脈の高地で2人を殺害した小柄なライオンの成獣を目撃。ナイロビの研究チームに報告した。そのライオンの特徴は毛皮が白っぽく、斑点の模様があったという。ライオンは幼い時は白い毛が多く、毛皮に斑点模様が存在しているため、この時は成長しかかったライオンの子ではないかと考えられている。

 その2年後、探検家のケネス・ガンダー・ドロワー氏はこのライオンの話を聞きつけ、より多くの標本を求めてこの地域へと探検に向かった。その結果、トレント氏と同じくアバーディア山脈の高地で3組のマロジーの足跡を発見。水牛を捕獲するため、群れを追跡している個体によって残されたものと考えられ、マロジーが単なる子供のライオンである可能性が低くなった。

 ドロワー氏は原住民にも調査し、彼らが長い間、ライオンやヒョウとも異なる個体が存在していることを把握し、区別して呼んでいることを突き止めた。なお、ケニアではマロジーと呼ばれているまだらのライオンは、ウガンダの「ンタララゴ」、ルワンダの「イキミジ」、エチオピアの「アバサンボ」など、他の地域でも区別して呼ばれていたことが判明している。

 その後、ドロワー氏は自著「ザ・スポッテッド・ライオン」でマロジーについて報告。他にもR・I・ポコック氏はトレント氏が収集したマロジーの皮膚と頭蓋骨を調査するなど、多くの研究者がまだらのライオンの生存説について調査を行った。その結果、フンや足跡、頭蓋骨や毛皮などが得られたものの、結局それらの標本は「ヒョウとライオンの自然交雑個体」だった可能性が高いとみられている。

 以前、日本でも70年代に動物園で人為的に交雑させたヒョウとライオンの間の子「レオポン」が人気になったが、こちらは人為的なもので一代限りのものとされていた。今回のマロジーも同様のものと考えられているが、一方で実際につがいのまだらのライオンが目撃され、逃げ出す様子が確認されている。

 マロジーの実在性は今でも高いとする見方もある。今もケニアの高地に潜んでいるのだろうか。