創作の世界に出てくる怪獣の中には、ツノやギザギザした背ビレやトゲを生やしていて、見た目からして恐ろしげなものや、迫力のあるものが多い。それは、例えば伝説に登場する竜やドラゴン、または絶滅してしまった恐竜を造形の参考としているからだと思われる。

 だが、現実にはそこまで派手で装飾過多な生物は極めてまれであるし、未確認生物に関しても同様だ。だが、中には背中に大きなヒレらしきものが並んで生えているという外見をしている未確認生物も存在する。

 そんな未確認生物がアマゾン奥地の湖にすむと言われている「ホラディラ」だ。

 ホラディラはそれまで現地の人々に伝説として知られていた生物だったが、1993年に英国人ジャーナリストが目撃し、撮影に成功して注目を集めた。

 同年8月、ジェレミー・ウェイド氏はアマゾン川支流近郊の湖にボートを浮かべてアマゾンカワイルカの調査を行っていたところ、進行方向の30メートルほど先に突然大きな生物が出現したのを目撃した。背中の一部だけだが、写真に収めることにも成功。その姿は褐色の体に黒い三角のトゲないしは背ビレが並んでいるというもので、巨大な丸ノコギリが水面に一部を出しながら回転しているように見えたという。

 陸に戻ったウェイド氏が現地の人々に自分が見たものを尋ねてみたところ、現地で「地獄の牙」の意味を持つホラディラと呼ばれている生物であったことが判明したのである。

 ホラディラは非常に凶暴な生物であり、現地では守護神とあがめられ、かつては〝いけにえ〟がささげられていたこともあったとされている。

 果たしてホラディラの正体は何なのか。背中の一部の写真から描き起こされたイメージ画像ではステゴサウルスのような姿になることもあるが、ホラディラは基本的に水中で過ごすらしいことと肉食である点が、陸上の草食恐竜であるステゴサウルスとはかなり違う。

 また、ウェイド氏の写真を拡大してよく見てみると、大きな三角の背ビレに並ぶようにして、もう一列の小さなトゲの列が存在しているようにも見える。そこから彼が目撃しカメラに収めたものは大型のワニであり、たまたま身を翻した一瞬だったため、トゲが目立ったのではないかとする説も存在している。

 だが一方でワニがこのように泳ぐだろうか、ワニにしては背中のトゲが発達しすぎているのではないかなどの指摘もあり、正体についての結論は出ないままとなっている。

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