オカルト評論家・山口敏太郎氏が都市伝説の妖怪、学校の怪談、心霊スポットに現れる妖怪化した幽霊など、現代人が目撃した怪異を記し、妖怪絵師・増田よしはる氏の挿絵とともに、現代の“百鬼夜行絵巻”を作り上げていく。第14回は「トランペット小僧」だ。

 愛知県犬山市にある入鹿池は、地元でも心霊スポットとして有名である。付近にある天狗神社と併せて心霊マニアがよく訪れる場所でもある。同時にさまざまな妖怪が出現するため、妖怪愛好家からも注目されているエリアだ。中でも人気の高いキャラクターに「トランペット小僧」がいる。

 これは深夜に水面に浮きながらトランペットを奏でる妖怪といわれてきたが、実はモデルがいると以前からささやかれていた。筆者も愛知県の友人から聞いて、自分の現代妖怪図鑑に収録したり、雑誌記事でたびたび触れてきた。

 さて、この都市伝説のモデルになったと思われる人物が、ツイッター上で名乗り出た。当時中学生だったこの人物は、ブラスバンド部に入っており、心おきなく音を出せる入鹿池まで、自宅から25分かけて毎晩のように訪れ、練習していたという。深夜に鳴り響く、そのトランペットの音色にいつしか都市伝説が生まれてしまったというのが真相のようだ。

 妖怪伝説は実在の人物がモデルになって生まれることが多々ある。

 例えば、千葉県船橋市に伝わる現代妖怪「デカチャリ」(第1回として掲載)は、筆者の弟の中学時代の先輩がモデルとされており、自転車を改造して、バイクのエンジンを搭載した特殊な自作自転車で小学生を追い回していたという。その時の子供たちの恐怖心がデカチャリを生み出してしまった。やはり、人間が一番面白い。