幽霊の正体見たり枯れ尾花、とは昔からよく言われていることで、一見不思議に思えることでもよく確かめたり、検証することであっけなく正体が判明してしまうというケースは現実でも起きている。

 未確認生物も類に及ばず、未知の生物の死体かと思われたものが分析の結果、既知の生物のものであったという話は往々にして起きている。

 今年、中国で発生した「竜の鳴き声」騒動も興味深いものであった。

 7月1日、中国南西部の貴州省のある村で、山から不気味な鳴き声が響きわたるという事件が起きた。詳細は記事にリンクしてある動画を見ていただくとして、合成音のようなかなり大きな音がどこからともなく響きわたり、村のどこからでも聞くことができるというものだった。あまりに不気味な、しかし生物の鳴き声らしき声に村人はパニックになった。

 問題の鳴き声がSNSを通じて拡散したこともあり、村には謎の鳴き声を聞こうと大勢の人が訪れた。確かに、動画の中には大勢の村人の混乱する様子も捉えられている。

 この鳴き声について「伝説の竜の鳴き声ではないか」「大地震などの天変地異が起きる前兆ではないか」と様々な噂が流れ、混乱がさらに拡大するのを恐れた地方自治体は専門家とともに現地を訪れて調査する事態に発展したのである。

 結果、野生動物の専門家から、問題の鳴き声がボタンウズラないしはチョウセンミフウズラという小さな鳥が繁殖期にあげる鳴き声であったことが分かった。

 これらの鳥は体格からは想像できないほど大きく、よく響く鳴き声をあげるという。おまけに鳴き声も鳥のものとはかなり違うように聞こえる上に、山あいで反響していたため、混乱が起きることになったのだろうと推測された。

 日本では妖怪の「鵺(ぬえ)」はトラツグミという鳥の鳴き声から考え出されたという話があるが、現代でも似た話が出てくるというのは興味深いことである。

【関連動画】Strange sounds in the sky in Guizhou, China 1 July, 2020
https://www.youtube.com/watch?v=KRr6iJGlvMA