ヒマラヤに出る未確認生物といえば、獣人型UMAの「雪男」こと「イエティ」を思い浮かべる人が大半だろう。だが、歴史をひもといていくと、雪男の足跡が発見されて世界中の話題を席巻する前、別の未確認生物が注目されていたことはご存じだろうか。

 有名な雪男の足跡の写真がデュナン博士によって撮影され、写真付きで朝日新聞に掲載されるのは1952年6月15日のことだった。親指が大きく全体的に丸っこい、比較対象として横にピッケルが置かれた足跡の写真は日本でも話題になった。

 だが、そんな雪男の報道からさかのぼるること約4年。くしくも同じ朝日新聞の紙面に「ヒマラヤの怪獣」という衝撃的な見出しが掲載されていたのである。

 問題の記事は48年5月10日のもので、ヒマラヤ山脈のあるアッサム州バリバラで、90フィート(約27メートル)もの大きさの〝爬虫類型怪獣〟が目撃されていたのである。

 記事には目撃証言から描かれた怪獣の想像図も掲載されており、恐竜のようにたくましい2本足と大きく長い尻尾、猫背気味の丸い背中に不釣合いに大きく先がとがった口をした、奇妙な怪獣の姿が描かれている。怪獣は昭和の子供たちに人気だった恐ろしくもユーモラスなキャラクターだが、代表的な怪獣であるゴジラの初代が封切られたのは54年。このヒマラヤの怪獣よりずっと後のことである。そんな時代に、こんな漫画チックで、わくわくさせる怪獣の姿が紙面を飾ったというのは興味深いことである。

 しかし、この怪獣については証言があやふやなことなどもあって、どこまで信用していい記事なのか疑問符がつく。確かにヒマラヤ山脈には爬虫類型の未確認生物を想像させるようなドラゴン系の幻獣の伝説も存在したようだが、あくまで伝説であって目撃証言には乏しい。もしかすると、獣人系UMAの雪男が世界的に有名になる前は、伝説の幻獣の話とごっちゃになって語られていたのかもしれない。

 その後、雪男の足跡の写真が撮影されたことで、このヒマラヤの怪獣も埋もれてしまったのではないだろうか。

 なお、7月17日に筆者の新刊が新星出版社から発売される。「未確認生物UMA攻略図鑑」ということで、内容は「UMAを捕獲しよう!」というものだが、今回のヒマラヤの怪獣を含め、定番のUMAから珍しいUMAまで、様々なUMAの情報が掲載されている。子供だけでなく、一緒に読む大人も楽しめる内容を目指しているので、気になる人はぜひ書店で手に取ってほしい。