1992年6月26日、岩手県山形村の茅森さんは畑で見慣れない足跡を発見した。それは、どう見ても近くに生息する野生動物のものとは異なる奇怪な形をしていた。

 大きさは長さ22センチ、幅15センチ程度。指は4本、土踏まずの部分が大きくえぐれた形というか、指と反対側、かかとの方にもう一本の指が生えたような形をしており、畑から草地まで約20メートルほど数十個の足跡が続いて残されていたという。

 この足跡の正体を確かめるべく、地元役場や愛知県の日本モンキーセンター(京都大学霊長類研究所が隣接)に問い合わせたが、結局正体は分からずじまいだった。

 しかし、この事件をきっかけに地元ではその足跡の主を、発見場所の地名である山形村から「ガタゴン」と命名。広島県の類人猿系UMAの「ヒバゴン」よろしく、村おこしが始まったのだ。

 ガタゴンキーホルダーやガタゴンの足跡Tシャツといった関連商品の販売をはじめ、道の駅「白樺の村やまがた」では屋根の上に「ガタゴンの卵」オブジェが設置され、駅の施設名称に「ガタゴンサライ」と名付けられるなど、その範囲は多岐にわたる。

 また、毎年8月にはガタゴン祭りが開催され、祭りでは大きなガタゴンの卵を山車で引き、太鼓や流し踊りが続くにぎわいを見せるのだそうだ。

 余談ではあるが、ヒバゴンも「ヒバゴンのたまご」という名前にちなんだお菓子が販売されている。こういったUMAは卵から生まれるものだと考えてしまうのはどこでも同じなのだろうか。

 なお、あまり知られていないことであるが、実はガタゴンの目撃証言は古くから存在したようである。地元で起きた話題を記した「続々いわて怪談奇談珍談」(岩手日報社)には、1960年代と思われる時期にガタゴンと同じ形状の足跡が目撃されるという事件が掲載されている。

 30年前にも同様の報告があったということは、このガタゴンはいまだ知られていない新種の生物なのかもしれない。ゴリラも発見され、種として認められたのは20世紀に入ってのことである。もしかすると、日本の山奥には今も未知の生物が息づいているのかもしれない。