米国の都市伝説に登場する怪人に「ファントム・クラウン」というものがいる。

 カラフルなピエロの衣装に身を包み、フレンドリーな笑顔とひょうきんな動きで子供たちに近づいていく。海外では路上パフォーマーにピエロの扮装をする人もいるため、子供たちも何ら警戒することもなくピエロの方に寄っていくのだが、実はピエロの正体は殺人鬼だった。子供をさらい、隠し持っていたナイフで殺してしまう…そんな〝人さらい系〟の怪人がファントム・クラウンだ。

 ファントム・クラウンは古今東西問わず存在する「子供をさらっていってしまう存在」の怪談に、米国で有名な連続殺人鬼の事件が加わって生まれたものだと考えられている。

 この連続殺人鬼は、普段はピエロの格好をして慈善事業などを行っていた地元の名士だったが、その正体は多くの子供を性的暴行した揚げ句に殺害するという非常に残忍な側面があったのだ。

 後に彼は逮捕され、死刑となるのだが、彼の犯した殺人事件は当時の米国を恐怖に陥れた。そして、メディアによって〝キラー・クラウン(殺人ピエロ)〟の通称で呼ばれることとなる。

 その後、米国の小説家スティーヴン・キング氏がホラー小説「IT」を書いている。映画化もされたこの小説に登場する神出鬼没のピエロの格好をした殺人鬼は非常にインパクトの強い存在となり、恐怖を与える存在としての印象を見るものに与えることとなった。そこからこのような都市伝説が生まれたものとみられている。

 また、1981年にマサチューセッツ州ボストンで派手な衣装に身を包んだピエロのような格好の人物がお菓子や風船で子供を誘い出し、車で誘拐しようと試みる事件が多数発生した。

 目撃者の中には「パトカーが近づいてくると車ごと空気中に溶けるように消えた」とする証言もあった。そこからこの子供を狙うピエロにファントム・クラウンの名前がつけられることとなった。

 しかし、その後の調査によって実際に姿を消した子供はいないことが判明。この事件は噂ないしは集団ヒステリーによるものだったとみられている。しかし、このような事件が実際に起きたことによって都市伝説の怪人ファントム・クラウンは形になってしまったのだ。

 ちなみに現代でもファントム・クラウンは世間を驚かせることがある。ここ数年、米国各地で夜間、派手なピエロの格好で人を追いかけ、時に手にした武器を振りかざして脅かしたり、危害を加えてくるという事件が多発しているのだ。地元の警察はおそらくハロウィーンに合わせたいたずらだろうと語って警戒しているが、イタズラが行き過ぎて事故や事件に発展しないとも限らない。

 都市伝説の怪人ファントム・クラウンは我々の悪意の中に潜んでいるのかもしれない。


【関連動画】Creepy details released in South Carolina clown sightings

https://www.youtube.com/watch?v=Ga2hiUcHPT8