【220】アンコウか新種か怪物か…「キャンベイ島のモンスター」

2017年08月25日 12時00分

当時の騒動を報じた新聞

 数々の小説に出てくるテムズ川。我々、日本人にもっともなじみのあるイギリスの河川かもしれない。その位置はイングランドの南にあり、フランスに向いた東側から首都ロンドンのある西へと流れていく。

 

 ルイス・キャロル「不思議の国のアリス」、チャールズ・ディケンズの「オリバー・ツイスト」、アーサー・コナン・ドイルが書いたシャーロック・ホームズシリーズの「緋色の研究」にも出てくる。

 

 18世紀にはイギリス帝国の貿易の要となったが、その代償としてイギリスでもっとも汚い川のひとつとなる。「大悪臭」と呼ばれるほどであった。だが、1900年代の中ごろから清掃プロジェクトが大々的に展開され、川に生命が戻ってきたのだ。

 

 そんな1953年8月のこと。テムズ川の入り江の北側にある小さな半島のような形をしたキャンベイ島に奇妙な死体が打ち上げられた。テムズ川では洪水が起き、その直後に海岸で遊んでいた若者たちによって、この「キャンベイ島のモンスター」は発見された。

 

 体長は約76センチ、ピンク色の胴体と一体化したような頭部からは飛び出たような形でついた目。前足はないが、つま先が馬の蹄のような形をした後ろ足は生えている。二足歩行を想像させる形態だが、エラがついているところから水中の生物だということも分かる。

 

 実際に目撃した人物の証言では、皮膚は人間の肌に似ていて、周囲には「人魚だ」と言っていた人々もいたらしいのだ。この死体はすでに腐敗が始まっており、動物学者によって危険性がないことが確認されたあと、焼却処分された。

 

 しかし、キャンベイ島のモンスターはこれだけに終わらなかった。翌年1954年11月にも同じような死体が発見された。

 

 とある牧師が海岸を散歩していると、大きな生物の死体が転がっていた。今回の死体は120センチもあり、体重は11・3キロ。前回のものと比べるとかなりの大きさだ。

 

 そして前回のものと違うのは腐敗が始まっていないため、この奇妙な生物について調査をすることができたのだ。その結果、専門家にはアンコウの一種ではないかと考える人も多い。

 

 アンコウの中にはカエルアンコウと呼ばれる種類があり、このカエルアンコウは前足に見えるほど胸ビレが発達し、海底をまさに「歩く」のだ。さらに頭部に付いたツノのような突起物で他の生物を捕食する。

 

 確かに現在インターネット上でも見られる「キャンベイ島のモンスター」を捉えたとされる白黒写真を見た限りでは、アンコウの一種のようにしか見えない。しかし、この写真自体、怪物騒動が報じられたときにイメージ画像として使われたものなので気をつけたい。

 

 前述のように人魚と見間違える人も出てくるような形だったのだから、実際の怪物はもっと違う姿をしていたのではないだろうか。そのような説も根強い。

 

 目撃証言から推測するに、1900年代の中ごろにアンコウを「人間のような足にエラを持った生物」と見間違えたとは考えづらい。現在も正体は明らかになっていないが、新種の生物なのか、河川の汚染によって生まれた奇形なのか、謎は深まるばかりである。

 

 現在のテムズ川は世界中の都市を流れる、もっともきれいな川のひとつとなっている。

 

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