フランスで最も有名なUMAのひとつと言うと、皆さんは何が思い浮かぶだろうか。今でも犬型のUMAの噂が流れると、「こいつが復活したのではないか」と人びとを恐れさせている動物がいる。それが「ジェヴォーダンの獣」だ。

 ジェヴォーダンとはフランスの地名で、現在はロゼール県と言われている。県の面積のほとんどが山岳地帯で人口密度も低い地域である。そんなジェヴォーダンという地名を有名にしたのが、18世紀に猛威を振るったこの怪物の存在であった。

 ジェヴォーダンの獣は1764年から67年の3年間の間に200回以上も人間を襲撃し、100人以上の死者と80人以上の負傷者を出している。写真も証拠も現在となっては残されていないが、様々な形でイラストとなって現在まで語り継がれる伝説的な存在となった。

 見た目は牛のように巨大なオオカミ(もしくはイヌ科の生物)で、体毛は赤、巨大な牙が大きな口からのぞいている。尾は長く曲がりくねっている。残された文献やイラストによる描写はかなり細かく、妄想のような類いではないことが伝わってくる。

 正体に関しては諸説あり、富裕層の飼っていた珍しい動物のひとつであるライオンが人間を襲っていたのではないかというものがある。確かに、アフリカから舟で運ばれたライオンが逃げ出した場合、当時のフランス人がライオンを知らずに怪物だと思った可能性はある。

 筆者が有力視しているのは、やはり「大型のイヌ科の生物」というものだ。人間の元から逃げ出したペットが野生化し、巨大化するというのは生物学的に常識だと言われている。

 銀の銃弾によって倒されたという作り話のような逸話も残っているが、フランスの一地方で肉食動物が暴れ、大量に人間が捕食される事件が起きたのは事実である。その凶暴さ、運動能力に優れたため、フランス中を震撼させるような話題に発展してもおかしくない。

 正体はようとして判明していないが、大量殺人鬼ならぬ大量殺人動物の可能性は、今日でも起こりうる。自然破壊なども含め、対応を迫られる問題である。

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