【197】“日本のキメラ”合成獣「鵺」は存在した!?

2017年03月17日 12時00分

鳥山石燕の描いた鵺

 夜の鳥で「鵺」——この漢字を当てられた妖怪の名前を読めるだろうか。答えは「ぬえ」。こう聞くとご存じの方も多いだろう。

「からかさ小僧」や「一つ目小僧」と比べると、そこまでメジャーではないが、獣のようなイメージの妖怪を思い浮かべる人がほとんどではないだろうか。アニメ「ゲゲゲの鬼太郎」でも伝説の妖怪として登場し、強そうな感じがする。

 鵺の容姿は古典の「平家物語」によると、サルの頭とタヌキの胴体、手足はトラで尾はヘビ、それも尾の先にヘビの頭がついているという豪華さである。“欲しいもの全部入り”デザインだ。

「源平盛衰記」によると、サルの頭、トラの背中、キツネの尾、タヌキの足という別バージョンで描写されている。資料によっては頭がネコ、胴体がニワトリというものもあり、とにかくさまざまな動物がてんこ盛りである。

 このように空想上の生物にはさまざまな動物が合成された、いわゆるキメラは少なくない。ウマに鳥のような翼が生えたペガサス、ワシの頭と翼にライオンの胴体を持つグリフォンなんかが有名だろう。

 人間が怪物を創造する際に、それぞれの動物の機能が象徴された部位を合成していくのは納得いくだろう。やはり動物たちは畏怖の対象であったことが想像できる。

 あまりにもぜいたくなつくりの鵺だが、もし本当に存在していたとしたら見てみたくなる人が多いのではないだろうか。

 どうやら、かつて日本には「鵺のミイラ」が存在していたらしい。サルのような顔にヘビっぽい尾、細かいところまでは確認できないが、胴体はトラかタヌキのような獣の毛を生やし、短いタヌキのような四肢を持つ。

 これは大分県の別府温泉にあった「八幡地獄の怪物館」で展示されていたらしいのだ。現在、このミイラは残念なことに行方不明で、現物を拝むことは不可能だ。

 鵺は前述の通り、有名な日本の古典に登場する妖怪で、歴史にも大きく影響している。平安時代末期には毎晩丑(うし)の刻に東三条の森から黒雲とともに鵺が現れ、奇妙な鳴き声を上げて近衛天皇を悩ませていた。そこで源頼政が家来の猪早太とともに怪物退治したのである。

 筆者は、そのような有名な妖怪を一度は見てみたい、という声に応えてつくられたものではないかと推測している。