【170】無数のヒレを持つ海洋生物「ムカデクジラ」

2016年09月02日 12時00分

「動物図説」に載っているムカデクジラらしき生物

 前回は東南アジアで目撃される海の巨大なムカデ「コンリット」について紹介した。今回はそのコンリットと切っても切り離せない存在である「ムカデクジラ」について語っていこう。

 未確認生物の未知性ゆえ、コンリットをムカデクジラに含むような記述もあるが、ムカデクジラは背や腹に多くのヒレを持つクジラのことを指す。英語では「Many—finned sea serpent」と呼ばれるそうだ。多数のヒレがムカデを想起させるのだろう。

 このような大きなフィン(ヒレ)のついた巨大な未確認生物は、古くから世界中で目撃情報がある。ヒレが多い海洋の大きな生物とのことで、指し示す範囲が大きいからか目撃例は多いのだ。

 最初の目撃は紀元前3世紀で、ギリシャの海岸で多数の足のようなものがついた大きな海洋生物が打ち上げられているのが発見されたそうだ。

 紀元前120年にも似たような事件が起き、こちらは14・6メートル以上の大きさだったという。

 2世紀には古代ギリシャにおいて、アイリアノスという著述家が「動物の特性について」という書物を記した。その中にある「スコロペンドラ」についての記述が、ヨーロッパに広まるムカデクジラの元になっているのだろう。

 海岸沿いの地域で、背と側面に多くのヒレがあり、ロブスターのような尾を持った怪物の目撃情報があった。

 ちなみにスコロペンドラという名前、水陸両生のムカデである「スコロペンドラ・カタラクタ」が今年の5月に新種として認められ、名付けられた。大きい個体は20センチほどだ。

 ムカデクジラの目撃情報は世界中であると前述したが、我が日本にも残っている。1709年に貝原益軒が編纂した「大和本草」では生物学や農学について記されているが、ムカデクジラのような生物が載っている。貝原は自ら足を運んで見たものについて検証してきたため、実在する可能性が高い。

 さらに、この「大和本草」のムカデクジラと「動物の特性について」のスコロペンドラを同じものではないかと結びつけたのは南方熊楠であった。

 1899年にはアルジェリアで英国の軍艦に乗った水兵たちが、数えきれないほどのヒレがついた体長45メートルもある怪物を目撃した。30分にわたって戦艦と同じ程度の速度で海中を泳いでいたと伝わっている。

 古代から現代まで世界各地で目撃されるムカデクジラたちが、同じ種類なのかははっきりしないが、多くのヒレがついたクジラ並みの大きさの未知の海洋生物がいる可能性は否定できないのが現状である。その場合は皮膚が硬化したクジラなのだろうか。海にはまだ多くの謎が潜んでいる。

【動画】Sea Monsters Documentary │ Full video │

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