今回紹介するUMAは、平安時代の日本で記録された奇妙な生物の死体に関するものだ。

「今昔物語集」巻三十一本朝第十七には不可解な話が掲載されている。現在の茨城県の海岸に、なんと巨人の遺体が漂着したという記録があるのだ。

 藤原信通朝臣という人物が常陸の守の任にあったときのこと。嵐の翌朝、東西浜に巨大な人間の遺体が漂着した。その身長たるや15メートルもあり、上半身を出して砂浜に埋まっている。首、右手、左足がなく、身なりや肌の感じから判断するに女と見受けられた。その腐った異臭は周囲に多大な被害を与えたという。

 UMA図鑑でも、謎の生物の死体が発見された事例は何度か報告している。アフリカで確認された、白いゾウのような外見を持つ「トランコ」は後日その死体と思われるものが漂着したし、謎の巨大な肉塊が漂着することをグロブスターの漂着と呼んだり、巨大な死体が打ち上げられた「ルスカ」の事例などもある。

 普通に考えて、巨大な人間の死体がそのまま漂着したとは考えにくいため、今回も何かしらの生物の死体が漂着し、その様子が人間のものに見えたと考えるのがいいだろう。

 筆者はこの遺体は当時はまだ生存していた絶滅動物「ステラーカイギュウ」ではないかと推測している。

 1741年、ドイツの博物学者がベーリング海で遭難し、ある島で食料と毛皮を得るために発見したステラーカイギュウを捕獲した。あまりにもノロマで肉もそこそこおいしかったため、当時推定でも2000頭はいたステラーカイギュウを、たったの27年で取り尽くしてしまった。現在でも目撃例はあるが絶滅したものと思われている。

 当然、今昔物語の時代にはまだ生存しており、ベーリング海から茨城の海岸に漂着してもおかしくはない。

 尾びれが切れていれば尻尾が足に見え、ヒレの片方が腕に見え、首ももげていたなら巨人に見えても不思議はない。肉質も女性に見えるかもしれないし、巨大なおなかは水を吸った人間の水死体にも見えるだろう。

 ちなみに妖怪「人魚」はジュゴン、妖怪「神社姫」はイッカクではないかと思っている。

 また、別の説では、近年になって存在が噂されている南極や北極の海に住むという謎の人型UMA「ニンゲン」だったのではないか、とするものもある。

 果たして、巨大な女性の死体の正体は何だったのか。残念ながら同様の報告はなされておらず、1000年も昔の海に漂着したものの正体を突き止めるのは難しいものになりそうだ。