“日本のビッグフット”とも称される未確認生物をご存じだろうか。「異獣」と言われるバケモノで、新潟県の山中にすんでいたという記述が江戸時代の書物に残されている。

 その書物は「北越雪譜」といい、江戸時代後期の雪国の生活をさまざまな角度から記したもので、生活や産業、風俗、方言、雪の分析などについて書かれたものだ。著者は鈴木牧之。

 雪国の生活や情報は、雪国に住んだことのある人以外にとっては未知の世界であり、「北越雪譜」は江戸時代のベストセラーになった。資料価値だけでなく、図版などを使った親しみやすさも人気の要因だろう。そして、そのなかには不思議な話、いわゆるオカルトのようなものまで含まれていて、異獣の話も載っているということだ。

 冒頭にも“日本のビッグフット”と書いた通り、異獣も猿人型のUMAである。しかし、一般的な猿のイメージとは違ったところが多いのが異獣の特徴でもある。頭の毛は背中まで垂れるようにして生えているため、たてがみのようにも見え、身長も人間よりもかなり大きかったそうだ。

 この異獣に関してはただの目撃談や情報ではなく、人間と心を通わせた面白いエピソードが記載されている。

 問屋で働いていた竹助という男が、仕事の使いで大きな荷物を背負って歩いていた最中の話だ。

 竹助は山中で一休みしたところ、この異獣が目の前に現れた。異獣は竹助が食べようとした弁当を物欲しげに見ていたので、竹助は弁当を分けてあげたのだ。うれしそうに食べた異獣は、竹助が出発しようとすると、彼よりも先に荷物を背負って山越えを手伝ってくれたのだという。その進む速度は非常に速かったと伝わっている。

 山を越えた後に、この異獣はさっそうと消えてしまう。この一件だけでなく、近辺に住んでいる人たちも同じような怪物を目撃しているとの情報もあり、やはり同じように食べ物をねだってくることもあったらしいのだ。

 人間と意思疎通が可能で、友好的な怪物が本当にいるのであれば、やはりきちんと発見して共存していきたいものだ。

 江戸時代の文献ということで妖怪の一種として伝わっているところもあるが、猿の中には脳下垂体の異常によって通常より大きく成長する個体が確認されている。

 この異獣も成長異常が起きた猿の一種だとしたら、未確認生物として研究・調査を進める価値のあるものだと思う。

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