ヨーロッパ中央部の7か国を横切り、ヨーロッパ最高峰とも言われるモンブランを擁する山脈であるアルプス山脈。そこに生息すると言われているのが、タッツェルブルムという未確認生物だ。

 タッツェルブルムはドイツ語で「鉤爪(かぎづめ)のある(手足がついた)虫」という意味で、この虫とはミミズのようなものからヘビなどの爬虫類も意味する。実際には手足の生えた体の太いヘビのような存在で、オオトカゲやサンショウウオにも近い生き物として捉えられている。

 アルプス山脈に生息していると言われている通り、標高500〜2000メートルの山地にある洞窟などで暮らしているそうだ。冬場での目撃例が少ないために、冬眠をしているという説が根強い。

 大きさは60センチくらいのものもいれば、2メートル近いものも目撃されており、大きく成長するものなのか、種類がさまざまなのか、別種の未確認生物なのか、今のところ判明していない。

 前述の通り、目撃例が少なくない。また、1934年にはスイスの写真家が撮影に成功、スイスやドイツを中心にブームとなる。その姿は前肢しかないトカゲのようなものだった。

 1979年にハンス・フックスという男性が豚舎からブタの悲鳴のような鳴き声を聞いて駆けつけ、本人も奇声を上げて心臓発作で亡くなってしまった。ハンスさんは亡くなる数日前にタッツェルブルムを見たと語っていたそうだ。

 ただ、これだけではただの新種や未発見の生物という範疇(はんちゅう)を出ない。ある種のモンスター性を持っているからUMAとして広く認識されているのだ。

 このタッツェルブルムは強い毒を持っていると言われ、人間や家畜くらいはかみついて殺してしまう。また、恐ろしいことに毒性のガスを発するという説もある。3メートルほどジャンプするとの目撃例もあり、高い運動能力と毒ガスを持っているとすれば近づかないのが正解だと思われる。かつては研究が盛んだったらしいが、素人が手を出してはいけない存在だろう。

 容姿に関しては前肢のあるヘビ、大きなトカゲのような話もあるが、中世には猫の頭と前肢を持ち、体はヘビという伝承も残っている。長い間、ヨーロッパで人々に知られている未確認生物で、まさに“アルプスのツチノコ”と言っていいだろう。ツチノコのような生き物が世界中に分布していると考えたら面白くはないだろうか。