5日に放送された「中居正広のプロ野球珍プレー好プレー大賞〜安心してください! 33年分ありますよSP〜」(フジテレビ)を見た。「プロ野球珍プレー好プレー」がゴールデン枠で放送されるのは11年ぶりとのことだが、珍プレーという言葉が生まれるきっかけとなった本紙評論家・宇野勝氏のヘディング事件や長嶋茂雄巨人軍終身名誉監督の迷言集など見どころ満載。特に懐かしかったのが、野村克也元ヤクルト監督が球場へ向かう際にチームバスではなく、隣に止まっていた全日本プロレスの外国人選手用バスに乗り込もうとしたシーンだった。

 これは1993年、ナゴヤ球場での中日戦に向かう時の出来事で、ヤクルトとスタン・ハンセンら全日本プロレスの外国人選手がたまたま同宿となって起こったハプニング。当時ヤクルト担当だった自分はその現場に居合わせていたが、間違いに気づいて恥ずかしそうにナインの待つバスに戻る野村監督の姿は今でも鮮明に覚えている。

 だが、それ以上に忘れられないのがこの年の夏、同じ名古屋のホテルで起こった「ヒモパンギャル乱入事件」だ。中日との首位決戦を終え、宿舎に戻ったヤクルトナインを待っていたのがヒモパン姿のおっかけギャル2人組。おっぱいを丸出しにするわ、選手に抱きつくわ、とにかく前代未聞のらんちき騒ぎを引き起こしたのだった。

「おい、東スポ。変な女が大騒ぎしてるぞ!」。デスクから取材のやり直しを命じられて仕方なく試合後に宿舎に向かった自分は当時、中継ぎで活躍していた金沢次男投手から仰天情報を教えられ、すぐさま現場に直行した。すると、フロントの近くに本当に上半身裸になっている女性がいる。しかも20歳前後でけっこうな美人2人組だ。すぐさま近くのコンビニに駆け込んでインスタントカメラを購入。ヒモパンギャルの写真を撮ろうと現場に戻ると、ホテルの入り口に入団2年目で若手のホープとして期待されていた石井一久投手が立っていた。

「変な女の子がいたので宮本さんに伝えようと思って…」。何と彼はホテルに現れたヒモパンギャル2人組の情報を教えてくれるために自分を探していてくれたのだった。「ありがとう。本当にありがとう…」。大慌ての取材中ではあったが、石井投手の心遣いには思わず目頭が熱くなった。

インスタントカメラで“痴女”2人を撮った写真は「池山仰天!ヤクルト宿舎ヒモパンギャル乱入事件」の大見出しとともに翌日の東スポ1面をデカデカと飾り、大きな反響を呼んだ。当時、駆け出しの野球記者で、まともに原稿を出せなかった自分は毎日デスクに怒られてばかり。ヤクルトの取材現場では青白い顔でいつもうつむいていた。金沢さんも石井さんもそんな自分をふびんに思い、情報を提供してくれたのであろう。あれから22年…。何とか東スポの記者としてやってこれたのもあの時、2人が教えてくれたネタが1面を飾ったことで少しだけ自信がついたことが大きかった。

 石井さんは引退後、吉本興業の契約社員となってバラエティー番組などでも活躍。今回の「プロ野球珍プレー好プレー」にも出演していた。画面を通してヤクルト時代と変わらないひょうひょうとした受け答えを見ていたら、22年前に名古屋で起こったあの何とも不思議な一夜のことが懐かしく思い出されたのだった。

(中京編集部長・宮本泰春)