1997年の神戸連続児童殺傷事件を起こした元少年A(33)が、6月に手記を出版し波紋を広げたのもつかの間、9月に公式ホームページ(HP)を開設し、「ギャラリー」に載せたナメクジのイラストや写真などで“キモキャラ”ぶりを炸裂。一方、自身の全裸写真を使ったコラージュからはナルシシストぶりも垣間見える。さらには有料ブロマガの配信まで始めた。

 HPの「レビュー」ページでAが最もスペースを割き、著書や詩、出演番組や動画を紹介しているのが、同じ神戸出身で1981年に「パリ人肉食殺人事件」を起こした佐川一政氏(66)。

 Aがこの事件を扱った書物を読んだのは中1のころ。「僕にとって(佐川氏は)猟奇殺人界の“殿堂入り”を果たした“偉人”であった」という。現地で不起訴となり、後に作家転身した佐川氏の著作は9冊持っているそうで、手記を書くにあたり強く意識したのが佐川氏の存在だとしている。

 Aの逮捕(97年6月末)から3か月後、佐川氏が出版した自著「少年A」で、「自分を“選ばれたもの”として自覚し、人生の大海原に乗り出してほしい」「力いっぱい生き通してくれ!僕はいつまでも君の年長の友だ」「君は本来、書くために生まれた人間なのだ!」などと自分に向かって呼び掛けていることについても、Aはレビューで触れている。

 最後は佐川氏に「心からの敬意と感謝をこめて」でレビューを結び、自らを「後輩」とまで宣言するAは、まるで佐川氏が自分の背中を押してくれたとでも言いたげ。だがその“先輩”も本心では、Aが自分と同類の犯罪者だとは思ってないようだ。

 佐川氏は、Aが捕まる前の97年6月4日、東京郊外の自宅マンションで私の取材に応じ、犯人像をこう語っている。

「(遺体の頭部を)切るにしても、自分を顕示したい欲求に従ってやってる感じ。死体を片付けようとか食べるとか、そういう内側へ向かって埋没するようなエナジーではなく、外へ発散して、それを人に知らせるのに快感を感じてる。要するに自己顕示欲が強い人なんでしょ。内に内に沈み込んでいった僕とは基本的に全く違う」

 佐川氏は「殺すこと自体に愉快を感じてくるって感覚は僕にはなかった」という。「殺さなくて(人肉を)食べれたら一番いいと思ってましたから、殺すこと自体に加虐的な快楽を感じ、それを顕示することで発散できるってタイプは僕にはまことに理解しにくい」とも。

 さらに、Aが犯行声明で「酒鬼薔薇聖斗」と名乗ったのも「全然リアリズムを感じない。全部が非常にチャチな、芝居じみた感じがする」と指摘。残忍な犯行についても「生きてる体温が感じられない。すごくメカニックっていうか、『たまごっち』でヒヨコが死ぬ程度の感覚しか持ってないんじゃない?」「強烈にそれをしたくてやったんじゃなく、対社会的なインパクトを狙っただけ」と、自身の事件との違いを強調していた。

 確かに、事件から20年近くたち暴走し始めた現在のAからは、自己顕示欲が見て取れる。

(文化部デスク・醍醐竜一)