分かりにくい改正道路交通法

2015年06月18日 12時00分

 6月1日に改正道路交通法が施行され、自転車の通行ルールが厳格になった。自転車と歩行者の事故が増えており、悪質な自転車の運転者を取り締まるという点では、意義があることは間違いない。

 しかし、この改正道交法は分かりにくいというか、はっきりしないところがいくつかあって「こういう場合はアウトかセーフか?」というたぐいの質問がネットの掲示板などで飛び交っている。飲酒運転がダメだとか、傘を差したりケータイを操作しながら運転するというのは、誰が考えても安全に支障をきたしそうだからまだ分かりやすい。一番“グレー”で困ってしまうのは「歩道の走行」だ。

 道交法上は自転車は軽車両なので、原則的に車道の左側を通行しなければならない。が、その“原則的に”というのがクセモノ。これが多くの人を混乱させてしまっている。

 先週の土曜日、記者は車道の幅が30メートルある地元の広い道路を自転車で走っていた。車道は自動車の通行量がハンパではないほど多く、そこを自転車で走ると命に関わりそうなので、歩道を通行していたら、前方から同じく自転車に乗って走ってきた警官に呼び止められたのだ。

 まさか、こんな状況でも車道を走れと注意されるのか?と思ったら「最近、自転車の盗難が増えているので登録を確認させてください」とのこと。とりあえずは道交法がらみで呼び止められたわけではなかったのでホッとしたが、これはちょうど“取材”の良い機会だと思い、警官に自転車の歩道走行について質問を浴びせまくった。

 この歩道は自転車通行OKか? OKなら右側の歩道を走っても良いか(車道通行時は絶対に左側)? 歩道を通行する場合は歩道の車道寄りを徐行せよと決められているようだが、車道寄りの部分は植え込みなどの障害物が随所にあって走りづらい。だから車道寄りを走らなくても良いか? などなど。ほとんどの問いに対する解答は「原則的にはダメだが」の前置きつきではあるが「この場合はOK」だった。ちなみに、その警官は自転車で“進行方向に対して右側”の“歩道”を“徐行とは言い難い速度”で“車道寄りではない部分”をこちらに向かって走ってきたのだった。

 要するに自転車の歩道通行はケース・バイ・ケースで、原則的にはダメでも状況によってOKになることが多いのだ。問題は、その「状況によって」の判断が人によって違い(自分と警官の判断が一致しないことも有り得る)、何が正解なのか極めて分かりづらいことだ。また、何が危険行為に該当するかなどのルールは自治体ごとに規制が異なるものもあるため、よけいに混乱する。

 安全運転を心掛けて自転車に乗る、なんていうのは当たり前だから、悪質な運転者はどんどん取り締まってしかるべきだ。でも、ルールにグレーな部分が多いのは実に困る。だいたい今回の改正道交法の詳しい内容について、国民にレクチャーが行き届いているとは思えない。警視庁では「自転車の正しい乗り方」というパンフレットを製作しており、読めばある程度のことは理解できるが、そのパンフレットは全家庭に配られたわけではない。どこで手に入るか、知らない人も多いだろう(警視庁のホームページからダウンロード可能)。

 改正道交法の施行からまだ3週間ほど。しばらくは日本中の路上で混乱が続きそうだ。

(文化部デスク・井上達也)