紅白終了後に飛び出した「歌っている歌手に失礼だ」発言の真意

2015年02月12日 12時00分

「あれじゃあ歌っている歌手に失礼だ」

 こんな声が音楽関係者の間でよく聞かれたのは、昨年末に放送されたNHK紅白歌合戦の直後だった。

 その紅白の平均視聴率は42・2%。一昨年の44・5%を超えることはできなかったが、「NHKとしては目標値を上回ったということで、大成功の部類だったとか。視聴率が出た日には局内では歓喜の声が聞かれました」とはあるレコード会社関係者。今回はエンターテインメント番組部長が異動になって初めての紅白だ。さぞかし胸をなで下したことだろう。

 何かと話題にはなったが、サザンオールスターズを出演させ、中森明菜を引っ張り出した。それに見合う数字だったのかどうかはともかく、成功の部類かもしれない。

 だが、終わった直後から聞かれたのは冒頭の声だ。

 ある音楽評論家が口にしたように「毎年見ているが、演出面でいえば今年が一番ひどかった。力を入れている歌手の出番の演出は見事と言えるんだが、力を入れてない歌手となると、ひどすぎた。『入れてない』ということが明らかに分かる演出だった。歌手に対して失礼な演出が多すぎる」と、怒りに満ちた声すらあった。

 紅白でよく見せる演出といえば、ジャニーズやAKB48といった人気タレントをバックダンサーとして起用する手法だ。紅白のように多くの歌手が出る番組だからこそできる演出だろうし、毎年同じようなことはやっているのだが…。

 別のレコード会社関係者が解説する。「怒るのも分かりますよ。ある歌手が歌っているとき、間奏でもないのに、バックダンサーで踊っていたジャニーズのタレントばかりを映していた。あれでは主役であるはずの歌手が“BGM”になってしまっている。今年は演歌歌手のときに、そういった場面が多く見られた。歌手に失礼とは、そういう意味です」

 ただ、NHKは歌手のバックダンサー要素や応援演出などに強いこだわりを持っている。

「昨年の紅白はゆずとかコブクロ、aikoとか、当然、出るだろうと思われていたアーティストが何組か落選しましたよね。その中のあるアーティストにNHKからこんな話がなされたそうです。『応援演出に協力していただけないのであれば、出場は厳しい』と。アーティストにもいろいろなタイプがあるでしょうが、イメージを大事にするタイプもいる。毎度毎度、縁もゆかりもない人を応援するでは、アーティストとしてのイメージを損なう人だっている。そんな経緯で“だったらいいです”と出場をあきらめた人もいたそうですよ」

 ヒット曲がなかなか出ない時代だ。NHKも視聴率を落とさないよう、演出に苦しんでいるのだろうが、紅白の主は誰か——。歌合戦の名にふさわしいものを作り続けてほしい。

(文化部デスク・島崎勝良)