中田英寿が貝になった瞬間

2014年11月20日 12時00分

 元サッカー日本代表の中田英寿氏と柴咲コウ——つい最近、意外な組み合わせの大型カップル誕生か?と大きな話題になった。久々に中田氏がスポーツ紙の一面を飾り、ちょっとばかり思い出したことがある。

 自分はサッカー担当をしていた時代、何度か中田氏の取材をしている。といっても、取材らしい取材ができたのはJリーグ平塚入りした後、1年程度。その後、ある事件をきっかけに中田氏は大のスポーツ紙嫌いになったからだ。自分の中で記憶に残っているのは、中田氏がスポーツ紙の記者に対して「貝になった瞬間」に遭遇したということだ。

 それは1996年のことだった。ある試合後の取材で中田氏が「自分はあえて守備をしなかった」という発言をし、これをあるスポーツ紙が「中田守備を拒否」という趣旨で批判的に報道した。自分はこの現場にはいなかったのだが、それから数日後の試合の後に「こんな記事出てましたが、どういうことか」と本人に聞いてみると、みるみる険しい表情となり「もう勝手にしてくださいよ」と吐き捨て、プイと横を向いてしまった。それで「ちゃんと説明した方がいいのでは」と迫ったものの「もういいです」と言って、その後、一切口を開こうとしなかった。

 実は「守備をしなかった」という発言の真意はチームとしての戦術的なことで、リードされていたため、守備に行かずに攻撃のために前線に残ったということであった。当時は取材陣も未熟で、この手の「初歩的なミス」は少なくなかったように思う。でも、たいがいの選手は時間がたつと、また口を開くようになるのだが、中田氏はそうはいかなかった。「あんたらもプロだろ」というのが彼の考えで、その後のスポーツ紙に対する取材拒否の姿勢は徹底していた。

 中田氏の取材拒否の引き金を引いたのは自分だったのかも…と考えたりもした。まあ、遅かれ早かれ、そうなっただろう——という話であるが。

(編集顧問・原口典彰)