英国人元CA死体遺棄事件で考えさせられたこと

2014年09月25日 12時00分

 外国人女性が日本で事件に巻き込まれ、死亡したケースを数件取材したが、最も考えさせられたのが、英国人女性で元CAのルーシー・ブラックマンさん(21=失踪当時)事件だった。

 2000年7月、観光目的で来日、旅費稼ぎのため東京・六本木でホステスのアルバイトをしていたルーシーさんが失踪したことで発覚した事件。身長172センチ、金髪に青い目の美人だったこともあり、大きく報じられた。

 英国から来日した父親(46=当時)と妹(20=当時)が記者会見し、懸賞金(1600万円)をかけて情報提供を呼びかけるなど、懸命な活動をしたことでも報道は大きくなった。

 同年10月、ルーシーさんがホステスをしていたクラブの常連客で不動産管理会社社長・織原城二容疑者(48=当時)が逮捕。翌年2月、ルーシーさんは神奈川・三浦市の海岸の洞窟内の地面に埋められた浴槽の中で、バラバラ遺体という変わり果てた姿で発見された。

 ルーシーさんを含む白人女性への様々な犯行が明るみに出た。起訴されただけでも1992~2000年に外国人女性10人に薬物を飲ませて性的暴行を加え、2人を死亡させたとして準強姦致死罪などに問われた。

 織原被告が事件の前段階で数多くの白人女性と親しくなれた要因は財力だった。父の遺産で東京・田園調布の330坪の豪邸に住み、20軒以上のマンションや別荘などの不動産を所有。ロールスロイスやフェラーリ、ポルシェを乗り回していた。

 毎晩のように顔を見せていた六本木のクラブの関係者は当時こう語った。

「欧米系の白人ホステスは、ほとんどがバックパッカーのような旅費稼ぎのアルバイトで、リッチな彼について行ったのだろう」

 別荘などでは複数の女性らとセックスを繰り返し、ビデオに収録してコレクションしていた。法廷では「合意の上でのセックスで、事後には報酬も払っていた」などと証言した。

 第一審の審理中にルーシーさん、二審の審理中にオーストラリア女性の遺族に、それぞれ1億円の「お悔やみ金」を支払った。裁判では20人の私選弁護人が弁護団を組み、10年を要した裁判は2010年12月、最高裁が上告棄却を決定し、ルーシーさんへの準強姦未遂罪と死体損壊・遺棄罪などの成立を認めた二審の無期懲役判決が確定した。

 ある法曹関係者は「殺害については状況証拠しかなく、無期判決は法律的には致し方ないが、世間には“遺族にお金を払ったから死刑にならなかったのでは”や“被告は金で済ませようとした”という印象が残ったかもしれない」と漏らした。

 警察関係者は「織原被告側がお金を支払ったことで、遺族がマスコミに出なくなり、世間はその後、騒がなくなった。一般的にはほとんどの犯罪被害者の遺族は、損害賠償訴訟で勝って1億円超の判決が出ても、加害者側に支払い能力がなければ、泣き寝入りするしかないのが現実。織原被告は損害賠償責任を果たしたことにはなったんですが…」と語る。

 庶民目線ではどうだろう。1億円は一生をかけて償わなければならない大金だ。だが、お金持ちにとっては同じ1億円でも…価値が違えばペナルティーの度合いも変わる。そもそも織原被告が支払った1億円が妥当なのかも不明だ。

「死亡交通事故でも最近は、損害賠償請求訴訟で、1人の死亡に3億円を超える判決が出ているケースもあります。飛行機事故では日本の航空会社が乗客1人につき約1億円を遺族に支払うとされるのに対し、後進国の会社は2000万円、逆に米国の会社は2億~3億円ともいわれます」(法曹関係者)

“命の値段”とは何なのだろうか。

(文化部副部長・延 一臣)