男には理解不能! なでしこジャパン川澄&大野の恐るべし「女の勘」

2014年05月05日 12時00分

 言い古されたフレーズだが、「女心」や「女の勘」といったものは男にとって本当に理解するのが難しい。

 それをもっとも痛感させられたのが、2012年ロンドン五輪直前にパリで行われた「なでしこジャパン—フランス女子代表」の親善試合だった。

 急成長を遂げているフランスは五輪本番でもダークホースとなる存在で、選手やスタッフの間では「前哨戦」として重要な一戦ととらえられていた。

 結果は、0—2でなでしこの完敗。2011年のW杯女王がフランスFWトミス、MFネシブ、DFルナールといった伸び盛りの選手に個の力の差を見せつけられ、攻守に精彩を欠いた。

 試合が終わった瞬間、私の頭をよぎったのは「本番もダメかも」の思い。その認識は佐々木則夫監督も同じで、試合後の会見が終わった後、当時はオフレコだったが、私の前で「さすがにこれは、まずいかも」とつぶやいたほどだった。

 この結果だけを見て、不安をあおるのは簡単。でも、日本国民がなでしこジャパンの金メダルを期待している以上、わずかな光明を探して少しでも前向きな記事を書かないといけない——そんなことを考えながら取材エリアに選手が来るのを待っていたが、MF川澄奈穂美(28=シアトル・レイン)が発した言葉は想定外のものだった。

 ——この内容はショックなんじゃない

 川澄:いや、そんなことないですよ。(五輪)本番では、たぶん勝てるんじゃないかな。

 ——えっ…でも、言いにくいけど、フィジカルもスピードも技術もフランスのほうが上だったような…。それでも勝てるっていう根拠はあるの?

 川澄:何というか、ひと言で伝えるのは難しいんですけど「女の勘」というか…とにかく次は勝てるはず。逆に、負ける気がしないんですよね。

 その後に出てきたFW大野忍(30=アーセナル)からも「深く考えすぎですよ。私たちの中では結構、楽観してるんだから。たぶん次は勝てますよ」。
 明らかに自分と違う思考回路なのは単なる男女という性別の違いなのか、それとも勝負師としての感覚が自分にはないだけなのか。答えが見つからないまま、ロンドンに飛んだ。

 そして迎えた準決勝フランス戦。なでしこジャパンは2—1で勝ち、決勝進出を決めた。

 試合後、取材エリアで川澄は「だから言ったでしょ」と笑った。

 大野には「最初から自信あったんだから。この前負けたとき、記者のみなさんのほうが落ち込んでて、そのほうが心配だった」とちゃかされた。

 大会後、佐々木監督と話をする機会があったので聞いてみた。

「あの時の女の勘って監督には理解できていたんですか?」

 すると「あの時は、両チームのコンディションとか技術、連係面の伸びしろを冷静に分析しても、ちょっと危ないかなって思っていたんだから。なんで彼女たちはそこまで自信があったのかな」と苦笑いされた。

 FIFA女子年間最優秀監督賞まで獲得した指揮官でさえ理解できない女性の心理。どんなになでしこ取材歴が長くなったとしても、その答えには一生たどり着けないのかもしれない。

(運動部デスク・瀬谷宏)