参った。持病の腰痛が再発してしまったからである。ちょうど1か月前のことだ。出勤しようと思って靴下をはこうとかがんだ瞬間、腰に電気のような痛みがビリッと走った。それからは、もう悶絶。さすがにまともには動けず、会社には頭を下げて数日間の休みをもらった。

 やっとの思いでたどりついた整形外科の診断は「腰椎椎間板症」。本来ならばクッションの役割を果たすはずの椎間板が潰れかかっていることで、腰回りの筋肉が極度の緊張状態となっており、今回のようなギックリ腰や慢性的な痛みを誘発してしまうらしい。

 ギックリ腰の痛みというものは経験した者にしか分からない。「ギックリ」という何となくかわいいネーミングだからか、中にはいぶかしげな顔で「そんなに痛いもんなの?」と聞いてくる人もいる。いやいや、痛いなんてもんじゃない。できることならば、こんな地獄のような“仕打ち”など経験しないほうが身のためだろう。

 ちなみに欧米では、「ウイッチズ・ショット(魔女の一撃)」と呼ばれているそうだ。どうして、そんなウンチクを知っているかというと以前、ジェイソン・ジアンビと腰痛の話題で盛り上がったことがあったからである。

 実をいうと、ジアンビも慢性的な腰痛に頭を悩ませていた一人。しかし、2000年ごろからパタリと腰痛が起こらなくなったという。一体どうやって克服したのか――。

「腰痛は『怒り』なんだ。オーバーヒートを起こしている自分の体が『ヘイ、ストップ! ヘイ、ストップ!』と怒りながら連呼しているのさ。そう思うようになって過剰なトレーニングを控えるようになったのはもちろん、何事に対しても無理をすることがなくなった。そして腰に毎朝起きてから“おまじない”をするようになったんだ。ユーもやってみるといいよ。自分の腰に『テーク・イット・イージー(落ち着け)』って3回言うんだ。それ以来、もうオレは“魔女の一撃”を食らうことはなくなったよ」

 かつてジアンビが大マジメに語ってくれた非医学的な“おまじない”を習慣化させ、これまで何度繰り返してきたことだろうか。それでもいまだ自分の腰痛は一向に治まる気配がない。

 その一方でジアンビは43歳となった今もインディアンスとメジャー契約を結び、腰痛を再発させることなく現役生活を送っている。やっぱり自分の腰は何かに対して、まだ“怒って”いるのだろう。そう思いながら「落ち着け」とつぶやく日々は続いている。

(運動部デスク・三島俊夫)