かつて「Jリーグの盟主」と呼ばれたヴェルディ川崎(現J2東京V)を担当していた1990年代半ばの話。背番号10を背負った日本代表MFラモス瑠偉(56=現J2岐阜監督)はピッチ内外で強いこだわりを持つ選手で、特に食べ物にはうるさかった。

 なかでも試合後に、用意されていないと大激怒したのが「かりんとう」だ。当時のスタッフによると「日本に来てからハマったみたい。試合後のロッカーに袋(未開封の意)のまま置いておかないと“冗談じゃないよ”って暴れ出すので、毎回ラモスさんのために買い出しですよ」。ただ普段は口にすることはなく、試合後にしか食べていかなったという。

 その「かりんとう」のお供として、ラモスが指名したのは某メーカーの缶コーヒー。老舗ブランドのもので、かなり甘いのが特徴という。本来なら日本茶が合いそうなところだが「かりんとう」と甘い缶コーヒーをセットで楽しむのが試合後のルーティンだった。ラモスの取材のために報道陣が取り囲んでも、“かりんとう待ち”になることは珍しくなかった。

 ただラモスが指名する缶コーヒーの銘柄は、かなりレアで、コンビニエンスストアでも扱っていなかった。同スタッフは「手に入れるのが大変なんですよ。クラブハウスの近くの店で売っていたのが、突然入荷されなくなって…。どこに行けば買えるのか。スタッフ総動員で情報を集め(クラブハウスのある東京・稲城市から)府中にあると聞いて買いに行きました…」

 またラモスは好きな食べ物を聞かれると、かりんとうではなく「生ビールと枝豆」と答える。当時のチームメートも「それさえ与えておけば、カリオカ(ラモスの愛称)は文句言わない」。ちなみに嫌いな食べ物は「納豆」という。

(運動部デスク・三浦憲太郎)