「荒くれ者」トルコ代表DFアルパイ・オザランが見せた意外な紳士ぶり

2014年01月20日 12時00分

鹿島FW鈴木隆行に“ノド輪”を食らわせたアルパイ(2005年3月)

 普段は穏やかで「いい人」なのに、試合になったら別人のような「乱暴者」になってしまう——これまで多くのJリーグクラブでこんな外国人選手を見てきたが、その中でどうしても忘れられない選手がいる。

 2004年7月に浦和に加入したトルコ代表DFアルパイ・オザラン。02年日韓W杯でトルコの3位に貢献した実力者だが、前評判はよくなかった。欧州選手権予選のイングランド戦で、事もあろうに、あのベッカムに暴言を浴びせて挑発。これが英国民の反感を買い、所属していたイングランドのアストンビラを解雇された。私の中にも「怖い選手」という先入観があった。

 だが、いざアルパイに会ってみると、危ない雰囲気なんてどこにもなかった。とにかく紳士でフレンドリー。チームに打ち解けようと日本文化を積極的に勉強している姿には好感が持てた。

 当時のチームでもすぐ人気者になった。浦和の中心選手だった岡野雅行(昨季限りで現役引退)からはヘンテコな日本語をたくさん吹き込まれた。ナビスコ杯決勝の前夜祭に向かう前、スーツを着込んだアルパイが「ドンペリ、イッポン、ハイリマシタ」とホスト風のセリフを連呼して周囲を笑わせていたが、これも、岡野の仕業だった。

 ピッチの中では頼もしかった。闘莉王、ネネと組む3バックは強力で、ナビスコ杯決勝こそPK戦の末にFC東京に敗れたが、リーグ戦では第2ステージ優勝の立役者となった。「私のことを取り上げてくれてありがとう。トルコにその記事を持って帰るよ」と小さな記事だったにもかかわらず、私にお礼を言いにきてくれた姿に悪童の風情なんてどこにもなかった。

 ところが、アルパイの「本性」は翌年05年の開幕戦・鹿島戦で出た。闘志ばかりがカラ回りし、前半終了間際に鹿島FW鈴木隆行に“ノド輪”を食らわせて一発退場。1試合の出場停止明けで臨んだアウェーの大分戦でも主審の判定にキレてしまい、わずか3分間で2枚のイエローカードをもらってまたも退場。浦和に来る前の「荒くれ者」に戻ってしまった。

 試合後、GMを務めていた森孝慈さん(故人)を「クビですか」と問い詰めた。森さんは「普段はいいヤツなんだけどな。スイッチが入っちゃうとどうにもならない」と困り顔だった。「ジキルとハイド」のような二面性を持ったアルパイはその後2か月近く出場機会が与えられず、5月15日の横浜M戦を最後にJリーグを去った。

 しばらくしてから、アルパイがW杯予選スイス戦で乱闘事件を起こし、罰金と6試合の出場停止処分を受けたというニュースを聞いた。「やっぱりな」と思った半面、浦和にいた最初の半年の“ナイスガイ”なアルパイは何だったのだろうと思わずにいられなかった。前年のステージ優勝の時に履いていた金色のスパイクを私にくれると約束していたが、それもうやむやのまま終わってしまった。私がだまされやすいのか、それともアルパイが「だまし上手」だったのか。その答えは今も分からない。

(運動部デスク・瀬谷宏)