大学生のころだから、もう20年以上前の話だが、親しくしていた先輩から「弟がワープした」という話を聞き、驚いたことがある。

 ある夜のこと。先輩の弟A君は東京・甲州街道沿いの住宅街(世田谷区)にある裏道を自転車で走っていて、何やらただならぬ雰囲気を感じたという。記憶では確か、周囲にモヤがかかり、前方の十字路にある道路反射鋲(地上に出っ張った反射板)がチカチカ光って…とか、そんな状況だったと思う。

 そして次の瞬間、A君は別の場所にいた。その十字路の先にあるはずの環七通り(環状七号線)をとっくに越え、隣町の住宅街を自転車で走っていたというのだ。

 A君は当時まだ10代前半。「子供だし、何か勘違いしたんじゃないですか?」と私が言うと「弟はそういう変なウソをつくようなヤツじゃない。間違いなく弟はワープしたんだろう」と先輩は力説した。

 そんな昔話をふと思い出し、ネットで調べてみると、ワープ体験談の実に多いこと。それも具体的かつ詳細で、大概はホントに起こった体験なのだろう。

 こうした超常現象は、自分の身に起きたら信じられるだろうが、そうそう経験できるものではない。ただ、周りでそういう体験をした人がいて実際に話を聞くと、テレビ番組や本などで見聞きするよりはるかに説得力がある。

(文化部デスク・醍醐竜一)