「優勝は西武じゃ」 CS突破したソフトバンク達川ヘッドの複雑胸中

2018年10月22日 12時00分

 その名の通り、まさに「クライマックス」だった。21日にメットライフドームで行われたクライマックス(CS)シリーズファイナルステージ第5戦。パ・リーグ王者の西武が2位のソフトバンクに屈し、日本シリーズ進出を逃してしまった。

 伸るか反るか、あるいは生きるか死ぬか。それぐらいの覚悟も必要になる短期決戦では、レギュラーシーズンのチーム成績がそのまま反映される保証などまったくない。雌雄を決した直後、あらためてその怖さを痛感させられた。

 先月30日にリーグ優勝を決めて破顔一笑だったはずの西武・辻監督が、それからちょうど3週間後には号泣しながら手で顔を覆っていた。敗退後の本拠地最終戦セレモニーでマイクの前に立ったものの思わず涙をこらえ切れずにおえつ。「悔しいです。まさか今日、2018年シーズンが終了するとは考えてもみませんでした」と声を震わせた。

 一方、CS突破を果たしたはずのソフトバンクの面々も球場内では明らかに喜びもどこか控えめだった。球場を出てから宿舎内で行われたビールかけで選手や工藤監督ら首脳陣はようやくリミッターが外れたかのように大はしゃぎしていたものの、やはり敵地メットライフドームにいる間は狂喜乱舞することもなく王者の西武に何となく配慮している様子がうかがえた。

 特に達川光男ヘッドコーチがいつになく無表情だったのが印象的だった。ちなみに前日20日の第4戦では勝利した直後、通路を歩いているところで私の顔を見つけると「おお、三島くん!」と声をかけてもらい、白い歯をのぞかせていたばかり。ところが、この日はまるで違った。

 試合後、メットライフドームの名物といえる関係者用の階段108段をゆっくりとしたペースで上がって来た達川ヘッドと目が合ったので「おめでとうございます! (出身地であり、古巣球団との対戦という意味もあって)広島凱旋ですね!」と祝辞を伝えると、真顔でにべもなく次のように言われた。

「何もめでたいことなんかない。優勝は西武じゃ」

 ハッとした。ソフトバンクがリーグ制覇を成し遂げた昨年レギュラーシーズン終了後のことを思い出した。臨時ホークス担当として福岡への出張中、達川ヘッドから食事に誘われてご一緒させてもらう機会に恵まれ、その場で何度も「CSはとにかく負けたくない。日本シリーズには出たい」という言葉を繰り返し聞いていた。

 そのとき本人は口でこそやんわりと否定していたとはいえ、実を言えば優勝チームならではのプレッシャーがCS前にひしひしと重くのしかかっているように思わずにはいられなかった。

 だから達川ヘッドは西武の悔しさが手に取るように分かっていたのだ。自分たちが2位からCSを突破して日本シリーズ進出を決めたことは本音で言えば確かに喜ばしい。それでもリーグ王者になりながら日本シリーズに出られない相手のことを考えるとやはりふびんであり、心中複雑となっていたのだろう。

 そう考えれば、素直に喜ぶわけにもいかない。それで「優勝は西武じゃ」という言葉が飛び出したのだ。その優勝チーム・西武のためにもパ・リーグの代表として必ずや日本一に輝く。工藤監督、そして達川ヘッドも含めた首脳陣、選手、スタッフともにソフトバンクの面々は今もそう誓い合っているはずだ。

(運動部デスク・三島俊夫)