忘れられない内柴裁判の“チン問答”

2018年09月20日 12時00分

 2004年のアテネ、08年北京の柔道男子66キロ級金メダリストの内柴正人と言えば、2011年看護福祉大学の客員教授として柔道を指導する立場でありながら、女子部員に対する準強姦容疑で逮捕されたことが記憶に新しい。13年に懲役5年の実刑判決が下され、服役後17年に仮釈放された。

 そして今年7月、キルギス共和国柔道連盟の総監督に就任したことが世間の話題を呼び、私は改めて内柴裁判を思い出してしまった。というのも、いろいろな意味で稀有な裁判だったからだ。

 1大会でも金メダルを取るのは至難の業。それが2大会連続金メダリストとなればカリスマである。それが教え子への準強姦というだけでも前代未聞だが、その公判中の珍問答には仰天の連続だった。検察側から「女子部員と食事をしているとき、どんな会話をするのか」と問われた内柴は「柔道とか下ネタですね」とサラリ。「ええっ、指導者なのに、教え子と下ネタ話すの!?」と傍聴席はざわついたが、これは内柴劇場の序章にすぎなかった。

 性行為に合意があったことを立証するため、カラオケ店で被害女性がフェラチオをしたという論理を構築。当時ハーフパンツをはいていた内柴は「裾からペニスが出ていたので、それを(被害女性が)くわえてくれました」と堂々と主張したのだ。ところが、その場にいた証言者は被害女性は内柴の方を向いていないと真っ向反論。さらに検察側も「その向きではできないはず」とその論理を崩しにかかり、さらにはそれまで「口淫行為」と抑制した表現をしていた裁判長まで「その体勢だったら移動しなければフェラチオできない」と口をついて出たのだ。厳粛な法廷内で「フェラチオ」が連呼されるというまさかの事態。私がぼうぜんとしたのは言うまでもないだろう。そして迎えた被告人質問。ここで“内柴節”がスパークする。当時の内柴の証言を再現するとこんな感じだ。

「ペニスをただくわえるだけではなく、全体をナメ回すんです」

「ペニスがいわゆる、半勃ちだったんですよ。『ダメだ…』と言って、(被害女性に)『もう1回ナメて』とあおむけになりました。(被害女性は)僕の横で正座して前にかがんでフェラチオしてもらったんです。そしたら、しっかりと勃ちました」

「ペニスが半勃ちだったんですが、いけるかなと思った。でも挿入しようとしたら入らなかった。ペニスの根元をグッと押さえて入れようとしましたが、それでも入らず『ダメだ…ちょっとナメて』と。そしたらパクっとくわえてくれました」

 いったい、彼は今、何の話をしているのだろう? そう思ったのは私だけではない。検察側、弁護側双方とも、相次ぐ想定外の証言に困惑している様子だった。結局、内柴の主張は退けられてしまったのだが、五輪2大会連続金メダリストの公判には、ただただ驚かされっ放しだったのを強烈に覚えている。

 日本では柔道指導ができないため、海外に活路を求め、社会復帰を図ろうとしている内柴。柔道の功績はもちろん、その前代未聞の公判を忘れることは決してない。

(文化部デスク・土橋裕樹)