大阪府警富田林署から勾留中の無職、樋田淳也容疑者(30)が12日夜、逃走した。容疑者は署内の接見室の面会者と隔てるアクリル板を押し破って、逃げたというから驚きだ。

 一般的に、逮捕された容疑者は警察署内の留置場に収容される。私の知り合いには結構な数の逮捕経験者がいる。留置場を経験した人は「留置者担当の警察官(留置担当官)は、捜査や取り調べをする部署ではなく、留置者の健康や人権を守らないといけない仕事なので、親身な人が多いですよね。それに、署としても、すでに逮捕して収容しているという余裕からか、担当さんの言動には余裕が感じられます。ゆるい関係とでも言うんでしょうか。まあ、そのせいで軽口、暴言もあったりしますが」と語る。

 詐欺容疑で逮捕された男性は「担当がワイシャツの下に着ている警視庁のTシャツがちょっとかっこよかったんです。で、Tシャツをほめてみたら『いいだろー。欲しければ売ってやるよ、1万円で。金ねーからよ。できるだけ高くな』と言われちゃいましたよ」と明かす。

 繁華街近くにある警察署では、ホストの逮捕者も多く収容される。男性は「美人キャバクラ嬢が冷やかしで面会(接見)に来たんです。で、キャバ嬢が帰った後、留置担当が『オマエに面会に来るあの女、いい女じゃねーか。オマエ、何様なんだよ。ヤクザでもこんな女呼ばないぞ。どこの店の女だよ。教えろよ! 行ってやるから。どーせ、オマエはずーっとここにいてキャバクラ行けないんだから。もちろんオマエのツケで飲んできてやるからな』といじめられちゃいました。ずっと、チクチク言われました」とこぼす。

 また、ある男性が逮捕された際、恋人が手紙を差し入れてくれたという。男性は「担当さんが『おっ、女からの手紙か? 見せてみろ。読んでやるから』と手紙を取り上げられました。『○ちゃん、○ちゃんがいないと、誰といても一人でご飯食べたり、飲んだりしているみたいでさみしい。ねえ、いつ帰ってくるの?』だとさ。『オメー、モテるな! ふざけんなよ。ここじゃあ、おめーはセックスできないんだからな』。ひどいですよね」と語る。

 逮捕経験者にとって、留置所生活は一生忘れられない体験だろう。そこでこんな軽口、暴言を受けたら、一言一句、その言葉が脳裏に焼きついてしまうのだそうだ。

(文化部デスク・三浦伸治)