日本ボクシング連盟の不正流用疑惑や、日大アメフット部の悪質タックル問題などで、すっかり陰に隠れた感があるのが、衣料品通販サイト「ZOZOTOWN」を運営するスタートトゥデイ・前沢友作社長の球界参入の話題だ。新球団立ち上げか、それとも球団買収かは依然として不明だが、やはり現実味があるのは「買収」だし、どこを買うかとなれば、前沢社長の出身地でもある千葉ロッテ…となってしまうのは自然の流れだろう。

 実際、近年のロッテは“いつ身売りとなってもおかしくない”状況が続いており「選手補強に消極的」「球団職員が人手不足」など、内部からも不満が噴出。「明らかに球団経営の意欲がない」との指摘もあった——と、ここまでは先日、本紙で報じたものだ。

 前沢社長が意思表明した後日、千葉ロッテの山室球団社長はすぐさま「(球団を)売る意思はありませんし、今後も売る予定はありません」と明言したが、果たして本当にそうなのだろうか。単なる疑心暗鬼ではない。重光武雄オーナーが8年前に口にした“あの言葉”が頭から離れないのだ。

 8年前——2010年のロッテは西村徳文監督のもと、3位から日本シリーズを制覇。「史上最大の下克上」と言われた年だったが、その一方で球界関係者の間では「ロッテが身売りの準備を進めている」と、まことしやかにささやかれていた。

 当時、ロッテはちょうどクライマックスシリーズの真っ最中だったが、遊軍記者だった私は重光オーナーを直撃すべく自宅前でご本人を待った。

 夜7時に張り込みを開始してから、およそ3時間後。姿を見せた重光オーナーに、さっそく身売り交渉があったかどうかを聞くと「そんなことはまったくない」と完全否定。しかし、将来的な身売りの可能性について聞くとこう語ったのだ。

「野球が好きで好きでたまらないオーナーがいて、球団を大事にしてくれるところがあれば」

 そして最後、改めて身売りについて聞くと重光オーナーは「(現状で)そういうのはまったくありませんから。将来は知りませんけどね」。意味深な言葉を残し自宅へと消えていった。

 前沢社長は少年時代に野球をやっており、年に数回は社員を連れZOZOマリンに足を運ぶという。スタートトゥデイ社内にある野球部にも所属しているという野球好きだ。しかも地元愛にあふれ、スポーツを通じた社会貢献にも意欲的だと言われている。単なる“広告塔”として球団所有を考えているわけではなさそうだし、それこそ「野球が好きで、球団を大事にする」オーナー像に合致するのではなかろうか。

 8年たった今、重光オーナーのあの言葉が真に迫ってきたように思えてならない。今後を注視していきたい。

(運動部主任・佐藤 浩一)