えっ、ギブソンがなくなってしまう!?

2018年02月22日 12時00分

 米国のギターメーカー「ギブソン」が経営危機に陥っているというニュースが、音楽ファンを騒然とさせている。あまりギターに興味がないという人にはピンとこないかもしれないが、ギブソンといえばフェンダーと並ぶ世界的なギターのトップブランド。スポーツカーでいえばポルシェやフェラーリのようなものだ。その存続が怪しくなっているというのだから、特にミュージシャンにとっては由々しき問題だろう。

 ギブソン製品の売れ行きは、ここ数年間でかなり落ちてきていた。高級ギターなので、プロならいざ知らず、そんなに何本も買うようなものではないし、クルマと違って数年ごとに買い替えることもない。逆に良いギターほど、一度買ったら一生モノだ。となると、売り上げを維持するには若い新規ユーザーを取り込んでいくしかない。

 そこで問題となるのが価格。とにかく高いのだ、ギブソンは。近年は比較的リーズナブルなラインアップも設定してはいるが、いかにもコストを抑えた廉価版という感じの作りで、同じ価格帯なら日本のメーカーのギターのほうがよほど作りがしっかりしている。ちゃんとした“ギブソンの音”を求めようとしたら、ブランドイメージを象徴する代表的ギターの「レスポール・スタンダード」が、2018年モデルで30万円ぐらいする。これでは高校生などがバンドを始めようかと一念発起しても、簡単に手に入れられる価格ではない。

 実はバンドを始める高校生の数自体は少ないどころか、かなり多い。例を挙げれば、ウチの長男は昨年卒業した高校で軽音楽部に入っていたのだが、なんと部員の数は100人を超えていた。ドラムなどに比べてギターを志す若者は圧倒的に多いので、少なく見積もっても50人以上はギターを買っただろう。

 その彼らや彼女らのうち、ギブソンのギターを使っていたのはほんのひと握りだが、ライバルのフェンダーは、意外と多かった。というのも、数年前まではフェンダー・ジャパンというメーカーがあり(現在は米国の本家に統合されているが日本での製造は継続している)価格的にも高校生がアルバイトをすればなんとか買えるラインアップだったのだ。

 フェンダーの場合、価格は手頃でも見た目の安っぽさはないし、日本の楽器製造技術はハイレベルだから製品としてもしっかりしている。高い米国製には手が届かなくても、ギターのヘッドにはフェンダーのロゴマークがさんぜんと輝いているから、高校生たちにとってほとんど不満はないだろう。

 ギブソンは傘下メーカーのエピフォンを通じて、大幅に安い廉価モデルを販売している。こちらはデキは悪くないのだが、いかんせんロゴがギブソンではなくエピフォンだから、どうしても“本物感”に欠ける。

 今後、ギブソンが生き残れるかどうかは分からないが、若い新規ユーザーが満足できるレベルのモデルを企業努力で安く提供するか、もしくは高級ブランドであることに特化して完全受注生産のギターメーカーになるか、いずれにしても大きな岐路に立たされている。

 最後に全くの余談。記者がエレキギターを初めて買った1970年代は、ギブソンなんて超の付く高級ブランド。周りにギブソンを持っているヤツなど一人もおらず、記者のギターも当然のごとく国産メーカー「グレコ」のレスポールでした。

(文化部デスク・井上達也)