サッカー元日本代表GK菊池が見せた「一流プロのこだわり」

2013年10月07日 12時00分

 かつて「Jリーグの盟主」と呼ばれていたヴェルディ川崎(現J2東京V)を担当していた1990年代半ばの話。当時、日本代表でも活躍したGK菊池新吉(現川崎コーチ)に怒られたことがあった。

 知人に頼まれて菊池のプレー写真にサインを添えてもらうため、本人にお願いしたところ「いいですよ」とあっさりOK。ペンとプレー写真を渡したところで、顔がこわばり始めた。数秒の沈黙のあと「ちょっと東スポさん。これにはサインできないね」と語気を強め突き返してきたのだ。

 まったく理由が分からない。すると「写真が全然ダメ」というのだ。サインを求めた写真は菊池が横っ飛びでボールをセーブしようとしている場面。私は素直にかっこ良く写っていると感じたので「いいプレーシーンじゃないですか。キレイにボールも写っているし…」と伝えると「分かってないな」と眉間にシワを寄せた。

「(写真の中の)目を見てください。自分はまったくボールを見ていない。体は反応はしているけど、目は正面を見ていてボールを追っていないでしょ。だから写真にはサインできない。欲しいと言ってくれた方にも失礼。もっと違う写真を持ってきてください。そうしたらサインします」と固辞されてしまった。

 なんとかお願いして写真にサインを書いてもらったが、最後まで不満げだった。当時一流プロ選手のこだわりに強く感心させられた出来事だった。

(運動部デスク・三浦憲太郎)