オーストラリアで今月、またオーストリアでは来月からLGBT(性的少数者)の結婚がOKに。同性婚を認めた国はこれで27カ国となり、欧米主要国は全て含まれる。

  アジア太平洋地域でそれに続くのは、お隣の台湾だ。同性カップルの結婚を支持する今春の司法判断を受け、2019年5月末までにアジアで初めて法律が施行される。「そうなったら多くのゲイが結婚するだろうね。ただ親や親族にゲイだとカミングアウトしてて、安定した関係のカップルに限ってだけど」とは、日本企業の台北支社で働くK氏(40)。

 台湾のLGBT人口は、K氏の感触だと人口(2355万人)の10%、つまり200万人余り。「うち恋人がいるのは35%(約70万人)で、10年以上付き合ってるのがその10%(約7万人)、5〜10年のカップルが25%(約17万5000人)ってとこかな。ただ親にカミングアウトしてるのは、周りを見渡すと全体の2%(約4万人)ぐらいじゃない?」

 すでに同性婚OKの国でも親の問題はネックのようで、K氏は「同性婚が普通になるのは、あと1世代先」とみる。

「アメリカのゲイ友達のほとんどは裕福で、パートナーと長年安定した関係なのに誰も結婚してない。『結婚しないの?』って聞いても笑ってごまかされる。アメリカも台湾も、年配世代の結婚に対する考え方はまだ堅い。そんな親たちの伝統的価値観を壊したくないし、結婚の問題自体を話したくないんだと思う。たとえ親が結婚を許しても、その後出てくる様々な問題と向き合うのには勇気いるし。台湾も同じようになるよ」

 台北の輸入業者(54)は台湾南部・高雄の会社社長(48)と遠距離交際し丸12年だが、彼らも家族やノンケ友達にはカミングアウトしていない。「でも時が来たら、法的な権利を勝ち得るため、ためらわず結婚する。我々が年を取った時の生活設計にとても重要なことだから。周りの同世代友達のほとんどが同じような考えだね」

 交際17年目の台北在住アラフィフカップルは「僕らの場合、結婚するわけじゃないけど、アジアで一番早く同性婚が承認されて、ゲイライフの選択肢が増えるのは、対外的にも台湾の売りになる」と指摘する。実際、毎秋恒例のLGBTパレード「台湾同志遊行」も、同性婚を司法が認めた今年は、例年の7万〜8万人を大きく上回る12万人超が参加。アジア中からゲイ旅行者が集結し、インバウンド消費にひと役買った。

 もっとも台湾のLGBTでも、パートナーがいない割合のほうが多い。そんな一人のK氏が、独身貴族の気持ちを代弁する。

「台湾のゲイって、自分たち自身で人生を楽しむのに慣れてるから、親以外の生活の面倒を見る責任はないよ。若い世代は収入が低いから若い子とは結婚したくないし、財産を誰かと半分こするのもあり得ない。ただの彼氏以上に深い関係を誰かと築くのは、僕みたいなタイプには簡単じゃないし、彼氏をつくることさえすごく難しい…」。そんなK氏でさえ「でももし、そういう相手がいたら結婚を考える」と希望は捨ててない。

 対して日本はというと…。

 今月6日、東京・港区議会に出されていた同性パートナー制度を求める請願が、自民党以外の賛成で採択された。区議関係者によれば「自民が暗躍して、公明に保留するよう働きかけたり、採択できないように動いていた」という。また11月には、宮中晩さん会へ国賓が同性パートナーと出席することに、自民党・竹下亘総務会長(71)が「日本国の伝統には合わないと思う」と反対し、世間から批判された。

 与党がこんな状況じゃ“LGBT後進国”なのは当然。同性婚と親の問題と一緒で、国を動かす頭の堅い老人たちが引退した後の「あと1世代先」に期待するしかない。

(文化部デスク・醍醐竜一)