【デスク発ウラ話】ソフトバンクで育成選手が次々と戦力になる理由

2020年02月17日 12時00分

 なぜ育成選手が次から次へと一軍の戦力になるのか。ソフトバンクを担当していると、この問いを投げかけられる。

 現在、育成出身の支配下選手は10人(外国人含む)。エース・千賀、正妻・甲斐を筆頭に2018年にチームトップタイの13勝を挙げた石川、昨季セカンドを中心に114試合に出場した牧原、足のスペシャリスト・周東ら活躍している選手が何人も挙がる。

 支配下の若手の伸び悩みが顕著だった2~3年前は、球団の人間からも「ドラフトの時は大きく差があるはずなのに、明らかに支配下より育ってますよね。これはなぜだと思いますか?」と尋ねられたことがあった。

 当然ながら球団の方針、スカウトの眼力も大きい。“一芸だけ”でも他者に負けない光るものがある選手を獲得している。例を挙げれば、ズバぬけた足で侍ジャパンにも選ばれた周東や、肩を武器に10年の育成ドラフト6位で入団した甲斐だ。

 球団によっては昇格を念頭に置いての準支配下選手の意味合いが強かったりもする。それがソフトバンクの場合は完成度の低い選手を一発長打狙いで指名する。かつて球団フロントが「うちの三軍はアマチュアと対戦しても、普通に負けたりもしますから」と話していたが、そういった選手がプロのしっかりとした育成環境で成長していけば、支配下組を追い抜くこともできるというわけだ。

 もちろん、考えられる要素はこれだけではない。育成からのし上がってくる選手はハングリー精神が強いし、次々と周囲に成功者が出ていることも大きいだろう。そんな中で工藤監督がふと口にしていた考えにすごく納得させられた。オフの期間のルールで支配下選手と育成選手で大きな違いがあることについてだ。

 支配下選手は12月と1月の2か月間、監督やコーチが指導できなくなる。秋季キャンプと春季キャンプの間の大事な期間でもあるが、選手は球団の拘束から外れて自主トレに励む。結果を残している選手であれば、自分が何をやればいいか分かっているから問題ない。しかし、土台作りが必要な若い支配下選手の中には、やるべきことを伝えられてはいても、誤った方向に進むこともある。

 その一方で育成選手は契約期間が1月1日から12月31日となっている。拘束から外さなければいけない期間はない。いわゆるオフでも三軍首脳陣の下で、秋季キャンプからの流れで練習できる。ソフトバンクでは年末年始を除き3勤1休の日程が組まれている。他球団の選手や先輩選手との合同自主トレにも参加できるが、首脳陣がレベルの違いや練習メニューなど、本人のためになるものかを判断してからになる。オフの間も正しい方向に成長させることができるというわけだ。

 古くは支配下選手も12月や1月は首脳陣の下で練習漬けだった。現在の形は選手会が勝ち取った権利だ。ただ、活躍できなければ数年でクビになるのがプロ野球の世界でもある。2014年に中日・落合GM(当時)が、自身はフロントであるとしてオフに選手を指導した。結論としてルール違反となったが「(それがダメなら)そんなルールはなくさないといけない」とも話した。

 育成選手が許されることを考えれば、少なくとも指導を必要としている10代や20代前半の若い支配下選手を対象に何らかの特例があってもいいのかもしれない。世間で進んでいる働き方改革とは逆行するが。

(運動部主任・木下大一)