【デスク発ウラ話】78歳ボブ・ディランのとてつもない現役感

2020年02月06日 12時00分

 ボブ・ディラン。シンガー・ソングライターにしてノーベル文学賞受賞者。ポピュラー音楽界最大の巨人と呼んでも異論を唱える人は少ないだろう。1962年のデビュー以来、60年近いキャリアを誇り、現在はもう78歳の“おじいちゃん”だが、隠居や引退どころかその現役感たるや、すさまじいものがある。米国人男性の平均寿命が76歳ぐらいということを考えると、まさに怪物級である。

 現在も世界中で年間100本以上のライブを精力的にこなしているディラン。4月に来日し、東京と大阪で計14公演を行うが、これが日本限定のライブハウスツアーということで話題を呼んでいる。キャパの小さな会場で生のディランを見られるなんていうのは、海外ではほぼ考えられないことだ(まあ、その分、チケットは高いけど)。

 ライブ活動だけでなく、CDのリリース数もベテランアーティストの中ではかなり多い部類に入る。ここ数年でも2015年「シャドウズ・イン・ザ・ナイト」、16年「フォールン・エンジェルズ」、そしてノーベル文学賞受賞後の17年には3枚組の超大作「トリプリケート」と立て続けに新作アルバムを発表し、そのほかにも過去の発掘ライブやアウトテーク集などを含めたら毎年何らかのアルバムがリリースされているので、ブランクなんていう言葉には縁がないという印象だ。

 だが、この新作リリースに関してはちょっとだけ気になることがある。ディランは12年に「テンペスト」という大傑作アルバムをリリースしたのだが、実は自作曲メインのオリジナルアルバムは今のところ、それが最後。15年から3年続けて出した3作品は、全て昔のジャズやスタンダードナンバーのカバー集で、シンガー・ソングライターではなく“シンガー”としてのアルバムなのだ。つまりディラン本人の作による新曲はもう7年以上出ていないわけで、長いキャリアにおいてもこれだけ間が空いたことはかつてなかった。

 ノーベル文学賞の評価の対象となったのは、もちろん自作者としてのディランの作品。その作者が自分が書いた新作を全く出さなくなっているというのは、「もしや創作の泉が枯れたのかも?」と心配になってしまう。

 繰り返すが、ミュージシャンとしては年齢を全く感じさせないほどのアクティブさで仕事をしていることは間違いない。それだけに、せめてもう1枚「やっぱりディランの書く曲はすごい!」と思わせてくれるようなオリジナルアルバムも作ってもらいたいものだ。ただの老いた歌手ではない、他ならぬボブ・ディランなのだから。

(文化部デスク・井上達也)