【応援団のみなさん】

 長嶋巨人を支えた人たちの中で、ファン代表ともいえるのが東京ドームのライトスタンドで旗を振る、応援団の方たちだ。

 巨人を愛し、報道陣よりもチームを知りつくしている彼らの話は、勉強になることも多かった。東京ドームでのナイター取材の場合、担当記者の試合前練習の取材は午後5時に終わる。そこから6時の試合開始までの1時間は会社にネタの報告をしたり、食事をしたりして過ごすのだが、個人的にその時間はライトスタンドで応援団の人たちと過ごすことが多かった。少しでもネタの参考になる話を聞ければという思いから(要はネタがなくて毎日困っていた)で、最初は怖い人ばかりだとびびっていたが…。話してみるといい人ばかりだった。

 当時の東京読売巨人軍応援団のトップ、Iさんはパンチパーマで細眉、一見するとその筋の人かと思われる風貌だったが、築地の魚市場で働いていて、夜は東京ドームに通っていた。Iさんの後任の会長を務めたAさんも魚市場だったが、こちらはインテリやくざ風。2人とも曲がったことが大嫌いで一本、筋の通った気持ちのいい人たちだった。2人のお子さんたちも野球をやっていて、かなりの有望選手。楽しみにチェックしていたのだが、Iさんの息子さんは社会人野球までやったがプロから声はかからず。Aさんの息子さんもいろいろあって、残念ながら巨人入りとはならなかった。

 また、個人的に応援団がらみで強烈な印象が残っているのが、清原が巨人に来た1年目のことだ。長嶋巨人は開幕ダッシュに失敗して、6月の時点で最下位に低迷していた。首位のヤクルトには14ゲームも差をつけられ、早くも自力Vが消滅しようかとしていたところ。応援団の怒りも頂点に達しているだろうということで、東スポで緊急座談会を開催することになった。

 座談会に出席した応援団は「東京読売巨人軍応援団」「関東狂巨熱一家」「巨真会」「優巨会」「ファーストスターズ」の5団体。巨熱一家はのちの「外野応援団」で東京ドームのライトスタンドを一時仕切ることになる、何かと話題になった団体だ。座談会では清原への苦言や編成部へのバッシング、長嶋監督へのお願いなど様々な発言が飛び出し、そのまま紙面で紹介させてもらった。今の応援団では考えられない時代だった。

 というのも、現在は応援団が球団批判をすることはもちろん、マスコミが東京ドームで応援団の人たちに球団の許可なく取材をすることも禁止になってしまったから。球団としては管理しやすい時代になってよかったのだろうが、これはこれでファンの生の声を封じているような…。

 現在も応援団のトップとして奮闘しているMさんには陰ながらエールを送りたい。

(運動部デスク・溝口拓也)