松井秀喜が「あの人すげーよ! オレにはとてもじゃないけど、そこまでできない!」と驚嘆した男がいる。それは長嶋茂雄でも王貞治でも、レジー・ジャクソンやデレク・ジーターでもない。先日、8月26日に引退会見を行ったヤクルト・宮本慎也のことだった。

 松井がなぜ宮本を? 特別プライベートで仲が良かったわけでもなく、よく一緒にメシを食べていたわけでもない。確かに野球に取り組む真摯な態度は、若手選手のお手本とされていたのだが…。松井が驚いたのは宮本の言動だ。「奥さんや娘さんがいるのに、テレビで堂々とあんなことが言えるなんて…。オレもまだまだだよ」。

 それは宮本が2004年の正月番組に出演した時のこと。クイズのコーナーで「会ってみたい女優さん」というテーマで、他の出演者が何人もの女優の名前を挙げていく中、宮本ひとりが「及川奈央!」「朝吹ケイト!」「星野ひかる!」「美保純!」などと新旧のAV女優&ポルノ女優の名前を列挙し「AVマニア」であることをカミングアウトしたのだ。

 もちろん、本紙の読者ならご承知の通り、松井も「球界一のAVマニア」を自任し、AV観賞の趣味を隠そうともしなかった。だが、それはあくまで本紙を通じてのこと。テレビ出演の際に「私は大のAVマニアです」と発言することはなかった…いや、発言するほどの“度胸”が松井にはなかったのだ。

 当時独身の松井は、妻や娘もいる宮本の“漢(おとこ)”っぷりに激しく動揺。そして「あの人はすごい人だよ。自分も見習わなきゃいけない」と完全敗北を認めた——。そんなふうに松井と「宮本の男らしさ」について語り合ったあの日のことを、宮本の引退会見を見ながら思い出した。

(運動部デスク・溝口拓也)